友だちって何だろう?

苦手だったフローターサーブ
ここ一番の試合で 緊張の時
ボールをポーンポーンと床に弾ませて
構える
ネットをじっと見つめて
呼吸を止めて
考えるのはいつも
自分の為じゃなくて
あいつらの為 
そうしたら入るんだ 不思議と
ちゃんと



三年生の最後の試合
出られるのはあと一人 先生が言った
あいつかお前で考えてる
僕はあいつに
勝ったことがなかった
面の向こうに竹刀を構えるあいつ
向かい合って戦うのが
苦手な僕
飛び込んだ たった一度だけ
あいつに
心地良い音がして
面が決まった
だけど
お互いそのことには一言も触れなかった



長かった受験戦争
自宅の電話が突然鳴った
あいつは自分から不合格を知らせてきた
 今からそっち行くからさ
 良かったら要らなくなった参考書
 俺にくれない?
声を詰まらせながら 
ああ としか言えなかった
それからすぐにあいつが来た
玄関先で参考書を数冊手渡し
沈黙
あいつは明るかった
僕は暗かった
 他のとこもまわらなきゃ
足早に出ていくあいつの背中を
見つめていた



大学では
お互い下宿先が近く
同じ学部で同じコース
何だかんだで気の合った
あいつを僕はよく連れ出した
そのうちあいつが姿を見せなくなった
ある日 あいつが目を輝かせながら
 宝石には不思議な力があるから
 お前も一個は持っておいた方がいいよ!
急にカフェテラスに呼びだしたかと思うと
怪しげなカタログを見せて力説を始めた
 騙されてる!
 お前 絶対騙されてるから!
試験勉強に勤しむ学生たちで賑わう中
僕は 延々説得した



暇な学生の特権よろしく
夜な夜な僕はチャットルームに居座っていた
ある夜 気がつくと
それまであまり話したことがなかった
もちろん会ったこともない
画面上の相手に
僕は悩み事を書き漏らしていた
意外にも相手は真面目に話を聞いてくれ
アドバイスもしてくれ始めた
しかし急に沈黙
 うわあっ!
突然悲鳴が画面上に表示され
 どうしました?
僕は反射的に打ち込む
 足元が火事に!
 ええっ?
煙草の火が足元のゴミ箱に燃え移り
火の手が上がったのだと
しばし相手のパニック状態の書き込みが続く
 大丈夫ですか?
 大丈夫ですか?
僕は打ち続けた
(幸いなことに火はすぐに消えた)




続ければ
キリがないが

そこまで書いて
僕はなんとなく思った


君達が居て

僕が居る


チャーリー浜さん
なんて素敵


どうやら
僕がここに居るのも
君がそこに居るからみたい


       




自由詩 友だちって何だろう? Copyright  2010-12-28 01:16:45
notebook Home 戻る  過去 未来