カーテンコール

夜 眠る前に
街中でそっと
花火を打ち上げることにした


それは
音のない花火


暗闇の中に
現れては広がる
色とりどりの
懐かしいひかりだ


目を奪われるのも
つかの間
訪れる闇はどこまでも遠く
静寂は
どこまでも深い


僕は次々と
光線を広げる
この空間を知るために


生まれゆく
新たな生命
胸の中に広がる
偶発的な自由
次々と
形を変えて
鮮やかに色は燃え
光線は手を伸ばして
弧や輪と結び
幾重にも重なりあい
誰も起こさぬように
騒ぎ立てる
草花や蝶々
木々のざわめきや
星の流れ
または風の吐息となって
夜空狭しとばかりに
どこまでも
どこまでも
落ち着かない都市や
陰鬱な農村部にも手を差し伸べ
かと思うと
もの悲しい荒れ地や
静まりかえった氷河を呼びさまし
闇でうごめくサバンナや
冷たくそびえる岩山を明滅させた
光を差して
咲きこぼれた夜空は
眩しく燃えて
粛々と
閉じていった


追憶よ
それらは柔らかく
温かい
夜空を飾る
ひとときの祝祭
今夜眠れぬ人々を
慰める
ささやかな楽しみ


僕たちは 眠ることも忘れて
それらを見つめていた
天高く 描かれては消える
炎の絵を



やがて
幾筋ものまばゆい
光が流れると
それらは
緩やかにうねり
風のように瞬きながら
ほんの少し顔をのぞかせた
色とりどりの
小さな花々と共に
そっと
緞帳に隠れ
消えていった


僕たちも目を閉じ
うっとりしていると
いつの間にか
夜も消えていた                  




    


自由詩 カーテンコール Copyright  2011-03-10 01:06:39
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