16とそれからもうひとつ
佐々宝砂

btqhd氏は明け方の空を見上げて口吻をねじまげメタンガスを
含有する吐気を噴出した。氏は恋に悩んでいる。16人の氏の恋人
が揃って氏を紛糾するのだ。氏は16人の恋人すべてを愛していた。
その姿を思い出すと16ある葡萄色の器官がうずくと思われた。し
かし16では足りぬのだ。もうひとつもうひとつだけ余分に欲しい
のである。氏は自分にはないその器官を夢想した。16あるセック
スのすべてを憎みながら。氏はふたたびメタンガスを噴出した。穏
やかな朝である。空はあかるいむらさきの雲にけぶっている。



自由詩 16とそれからもうひとつ Copyright 佐々宝砂 2004-10-26 05:20:04
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Strange Lovers