書物の家
クローバー


小鬼、閉じこめた春雷
ささやきはインクに紛れて
その扉を通り抜けて、火の粉が散る
誘い込まれた、お菓子の家
小鬼をめくる
13ページ目、はじめまして。


小鬼、紙を食む梅雨
重なるように二つ並んだ靴跡
小さい靴と大きな靴
小鬼をめくる
124ページ目、こんにちは
扉に、尻尾の切れた蜥蜴が這う。


小鬼、殴り書く秋雨
解れていく木々の葉
アスファルト膨らみ摩擦は光る
小鬼をめくる
239ページ目、こんばんは
雲の上は平和。


インクに紛れた、紙は白く
小鬼、隠れ消える降雪
指をかけるページも、その扉も
瞬くように、また白くなる
雨音を吸う降雪
聞き取れるささやき、さようなら。


自由詩 書物の家 Copyright クローバー 2010-05-23 13:50:55
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