夏の揺らぎ
クローバー

(自動扉の開く気配
 夏の口が開き熱っぽい舌が僕をなめる
 揺れる木漏れ日 吹き出す汗 シャツを流れる風
 即興的に産まれたノイズ まぶしいタイル 
 葉の擦れ合う音 靴ひも 蝉の声はさらに重く
 僕は詩人 僕は詩人 僕は詩人 僕は詩人 僕は
 
 なにものにもなれていない。)



図書館へ続く道 蝉の声 駐車場に植えられたツツジの緑
車両通行止めの錆びた看板 自転車 駐輪スペースの屋根
迫り出した桜の枝 モザイク状の木漏れ日 風が擦れる音
自動扉が開く
冷気がまとわりつく

サン=サーンスの「動物の謝肉祭」を視聴する
彼の生涯をNHKで見たとき
ヘッセに自分をだぶらせたときと同じくらいの揺れがあった

どこかすわりのわるいじんせい

「水族館」の鉄琴が水面を揺さぶり光を乱反射させる
「化石」に埋もれたきらきら星は遠いこの国の子供たちも歌えます
そして計算されて作られた貴方の楽曲は
あまり知られることなく ひっそりと棚に収まっています

知らず涙が出ていた
ガラス一枚隔てた遠い国の蝉の声が
重力となり 作り物のように揺らいで 僕を押さえつけていた。


自由詩 夏の揺らぎ Copyright クローバー 2010-05-22 23:11:40
notebook Home 戻る  過去 未来