全手動一行物語(21〜30)
クローバー

21
恋人が血塗れの姿で、私の頭を凝視してくる。

22
砂を吐いていると、あさりがたくさん採れたね、とブルーの壁に区切られた丸い空から聞こえた。

23
科学者が妻に、ナスカの地上絵は飛んだのだ、と発見を報告すると、そりゃ地球はいつだって宇宙を飛んでいるわよ、と事も無げに。

24
ヒュルリ、流れ星が落ちたと思われる川辺で、5人の若者が願いを叶えようと星を探し回ったが、だれ一人として、6人になったことには気づかなかった。

25
教室の紫陽花のように、子供たちは散ることなく枯れていく。

26
その巨大な国際会議場では、各国の代表が意見を戦わせているのに、外に掲げられた国旗はみな同じ方向に、はためいている。

27
宇宙から地球を見ていると地球がギョロリとこちらを向いた。

28
リサイクル料金がかかるようになってから、別れ話がずいぶん減った。

29
彼女がホタルを見に行くと、ホタルが、人間で良かった?と話しかけてくる。

30
ジグソーパズルの最後のピースをはめると、完成したのは巨大なパズルの最初のピースだった。


自由詩 全手動一行物語(21〜30) Copyright クローバー 2010-05-11 23:40:40
notebook Home 戻る  過去 未来