全手動一行物語(11〜20)
クローバー

11
お互いのしっぽを追いかけてスピードを上げていく二匹の犬がだんだんと子犬に戻っていく。

12
少女の肩には、今まで出会った男性の手の跡がびっしりと刻まれている。

13
彼は、彼女が、オレンジジュースをストローで吹くのを見て、ひまわりの種を買って帰ろうと思った。

14
スペースセイルの帆が遠心力でゆっくりとひらくとき、娘の朝顔もきれいに咲いた。

15
彼女のために作った曲で、数万人集めてライブを行う彼の持っている、キーボードの音は出ない。

16
彼女は、彼が庭にバラを植えるのを見て、泥棒猫が、と呟いた。

17
妻は、私がメガネを新調する度に、ヤスリをかけようとする。

18
探偵は、私の顔をチラチラ見ながら、真実は小説より奇なり、と小説の中から言う。

19
魔女は、シンデレラが裁判の証拠として、ガラスの靴を提示したとき、靴にかけた魔法だけ解かなかったことを後悔した。

20
声をなくした少女が、耳の聞こえない少年についた嘘は、彼にしか聞こえなかった。


自由詩 全手動一行物語(11〜20) Copyright クローバー 2010-05-10 22:53:12
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