球体採取
暗闇れもん

壊れそうな気がしていた
一瞬でも気をぬくとパンパンに張り詰めた風船のように
空気を全て吐き出して
しぼみ何処かへ飛んでいきそうだった
会社での私はそんな感じなのかもしれない

感情が分からないと言われ
長く付き合った彼女は私から離れていった

感情の表し方がわからなかった
表情の作り方がわからなくて笑顔にさえなれない

表情に乏しいことは私にとっては日常で
感情をぶつけ泣いて怒る彼女が新鮮だった

特に怒りの表情が好きだった
むき出しの感情が遠慮なしに私にふりかかる

怒りの目
私を一瞬で他人に変える目

いともたやすく彼女は手の中で冷たくなる

銀色のスプーンですくい取って

飲み込むのに少し苦労するね

お腹の中でしゅわしゅわと怒りが溶ける音がする

色とりどりのアンティークの薬ビンに
色とりどりの球体が並ぶ




自由詩 球体採取 Copyright 暗闇れもん 2010-03-28 23:07:21
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壊した世界