食欲
暗闇れもん

彼女がやってくるというので僕は夜食の準備を始めた
シンプルな木の机に真っ白なテーブルクロス
ランプ
ナイフ
ホーク
今日は一口サイズのパイ包み焼き
料理が得意な僕の家に彼女はたびたびやってくる
キャリアウーマンの彼女にとって
ここは巣みたいなもんだって
ベッドの中で語ったこともある
こんな風に僕は仕事に疲れた彼女に
食事を用意し
お風呂を用意し
清潔なベッド
肌触りの良いシーツを用意する
でも指一本触れない

僕からは彼女に指一本触れない

ここは巣であり
僕の欲は果てしないが限りがある

伝える必要がない

手袋の下には小指がない

肉のやけた良いにおいがする




自由詩 食欲 Copyright 暗闇れもん 2010-03-28 23:23:23
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壊した世界