鼓動
空都

心臓の音がすき。
けれど
心臓の音を聴くのはきらい。
脈を打つ音を聴くのもきらい。

ふとした瞬間に
その音が聴こえてきて
とても不安にある。

だって、止まってしまったのがわかってしまうから。

聴こえることは
聴こえなくなるのがわかること。

そして大概
その音が聴こえてくるのは
大切な人。


たとえば
大好きなあの人とか。


あの人の胸に
頬をよせるとき
本当はとてもこわい。

急に止まってしまったらどうしようって。



終わらないものが無いことは
十分にわかっているけど、

この暖かな生命の音を
一秒でも長く
響かせてほしい。
時折、わたしにそれを聴かせて
不安がらせてほしい。


あの人から流れてくる
『とく、とく』
と、高鳴る音は
泣きたくなるほど優しかった。




残酷なほど正直なその音を
わたしは怖いくらいに欲しています。


自由詩 鼓動 Copyright 空都 2010-01-19 18:02:33
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