30cmとちょっと
空都

『ちょっと、相談があるんですけど』
から始まった会話。

あなたにぺったりとくっついて尋ねた内容は


『どうしたら背が伸びるんですか?』


もっと深刻な話を予想していたあなたは
ちょっと拍子抜けしたような顔をしていたけど、
私にとっては今一番の悩み事なわけで。

からかうように笑ったあなたの第一声は
『お菓子とアイスを食べなさい』
だった。

うそつきだと思った。

けれど、
くっついた背中は誠実だった。


うそばかりのあなたは信用できない。
誠実なあなたの背中は信用できる。



だから、
『急に心臓が自己主張を始めたのは、あなたに対してじゃない』
と言い聞かせた。


『背中だけがすきなのよ』
うそじゃないけど
本当でもない。

180cm以上のあなたと
150cm未満のあたしが
物理的に近づく日はいつなのかしら。


あなたの真正面から
その切れ長の瞳に向かって

視線を近づけたいから
背を伸ばしたいの

なんて
私は当分言えそうにない。


自由詩 30cmとちょっと Copyright 空都 2010-01-28 20:16:41
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