遺骨の前で ー詩友の告別式にてー 
服部 剛

大晦日に体調が急変して 
救急車の中で息絶えた友の 
告別式が行われた一月九日 

遺影の中から 
微笑む顔も 
棺の中に 
花を置いても 
まるでフィクションのようで 

制服姿の娘さんが 
棺を囲む参列者に 
挨拶の言葉を語る時 

僕の中の感情、がふいに緩み 
気づけば頬が、濡れていた。 

親族の男手で運ばれた 
台車に乗せられた棺は 
雲一つ無い冬空の下 
火葬場の入口へ、吸い込まれる 

(喪服の参列者達は、後に続いた) 

三十分後、骨になった友を 
箸で摘んで骨壷に、入れる。 

部屋に戻り 
献杯の挨拶で育ての親だったという義父は 
幼い子供達に絵本を読んで聞かせた 
在りし日の友の優しい面影を、静かに語った 

骨壷の前に突っ立つ棒の姿で 
喪服の僕は、考える。 

まるでフィクションのような 
夢の如き一生の間に 
人は一体、何ができるだろう。 
どれだけ本当の日々を、生きれるだろう。 
いくつのかけがえのない思い出を、つくれるだろう。 

産声を上げ、立ち上がり、歩き続け 
いつか誰もが御多分洩れず、骨になる迄。 





自由詩 遺骨の前で ー詩友の告別式にてー  Copyright 服部 剛 2010-01-10 21:30:01
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