こころの病院 
服部 剛

扁桃腺が腫れて、高熱が出て 
水もろくに飲みこめなかったので 
仕事を休んで総合病院に行った 

耳鼻咽喉科の待合室で 
中年の美しい女が頭を抑え 
看護婦さんに背をさすられながら 
洗面器に、嘔吐していた 

(世の中には大変な患者さんが
 いるんだなぁ・・・    ) 
点滴を打っている
自分の姿を棚に上げて、僕は思った。 

受付のロビーには 
列を成す病人達であふれ返り  
(世の中は、大層病んで
 いるんだなぁ・・・ ) 
列に混じりながらも、僕は思った。 

「目に見える、効果のある、医療」を求めて 
人々のごった返す年の瀬の病院で 
点滴の針を腕に射して、突っ立つ僕はふいに 
小さい戦争よりも自殺者の多いこの国の 
「目に見えない、こころの病院」について、考えていた。 








自由詩 こころの病院  Copyright 服部 剛 2009-12-31 15:14:16
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