傲慢
空都

お葬式に行った。
友達のお母さんの。


泣いてる人は沢山いて、
あたしのお母さんも、その隣の知らないおじさんも
こぼれる涙をハンカチでぬぐっていた。

あたしは何故か泣けなかった。
こらえていた訳ではないの。
本当に何も出なかっただけ。


そのあと、友達のところに行ったら、
友達はあたしも知っている人に
抱きしめられていた。
泣いてたよ。
どっちも。


その姿を見てみんなまた泣いていた。

あたしの目も潤んだ。

だけど気付いたの。
それは本物じゃないって。

その映画のワンシーンのような光景に
流されているんだ。
同情しているんだ。
酔っているんだ。

だからあたしは
誰にも気付かれないように
拳で涙をぬぐった。


友達に嘘をつくのは嫌だった。


何も言えなかったあたしは
無言で友達の手を握って
家に帰った。

握手はほんもの。



だってさ、
自分が体験してないことなんて
分かる訳ないよ。
感じたことないんだから。

分かると思ってるなら
それはただの
傲慢だよ。


自由詩 傲慢 Copyright 空都 2009-12-20 11:20:49
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