冬空の埋火
たりぽん(大理 奔)

眠れない夜の窓際で
二重に映る折れそうな月
見つめるわたしの虚像が屈折して
見知らぬ冬をさがしている

ひときわ風の音が強く思える夜は
肩の震えが止まらないものだ
ハーパーを湯で割って
むせながら忘れようとする

思い出す必要もない言葉を
忘れることのむつかしさ
階段の踊り場で
なにげなく振り向いてしまう
何度もなんども
そうしてきたように

瞳の奥が刺されるようだ
まぶたを閉じても
独り言のように流れ出る
それも、思い出す必要もなく

窓を開け放てば
窓を開け放てば

重なり合う月の虚像
折れそうな針に手を伸ばし
指先にほんとうの痛みが欲しい
肌が割れるほどの冷たさの
その罰に満たされれば

風が止んだというのに
耳鳴りが肩を小刻みに揺さぶる
いつものバーボンにむせながら
あきらめに似た淋しさに
かすかな温もりを探し当てる




自由詩 冬空の埋火 Copyright たりぽん(大理 奔) 2009-11-25 22:38:12
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