野宿考
たりぽん(大理 奔)


そこに左手を添えるために
アスファルトの途切れる場所を探している
私のからだを投げ出す場所は
小さなムシたちのわずかに湿った住処の
その上でありたい、そして
右腕が支えきれなくなった
重みで沈み込む柔らかさが
頬に感じる水滴の冷たさであってほしい
仰向けになった視線の先には
冬の星座が見えていて
惑星ごと一時間に十五度の速度で
私を置き去りにしていくだろう
私の右膝は
明け方の湯たんぽの暖かさに挟まれ
ムシの住処へとすすんでいくだろう
左手と、右手を添えるために
生きた温もりと明け方の冷たい滴
うすい布地のように霧散する場所は
すべてをゆだねるところではなく
投げ出されたからだから、だ
極光、そんな激しいものではなく
厳冬の日、暖めるために口元に寄せた手のひらから
漏れ出した吐息に
無慈悲な陽光が差し込んだだけ、だ
私が還っていく草むらは
そんな、あなたのよような
わずかな湿度と明け方の草露で
沈み込んでいく私に
一瞬の正気を投影するだろうか
お気に入りの三等星の名前をささやきながら
投げ出されたからだを
どんな恒星よりも薄暗いこの夜を
その左手を添えるために
アスファルトの途切れる場所を探している
草いきれの高さは膝の上
光らない羽虫が眠る
イーゼルのような送電塔に
今日も透明な四角形が飾られている





自由詩 野宿考 Copyright たりぽん(大理 奔) 2009-10-22 00:33:32
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