PIGSTY④
暗闇れもん

家の前に綾香は立っていた。
結局どうすることもできないまま、立ち尽くす私に呆れ、直子はチャイムを鳴らしている。
「おっかしいなぁ。おじさーん!!おじさーん!!直子ですっ!!!!綾香連れてきました!!」
どうして、あいつは出てこないんだろう。絶好のチャンスのはずなのに。
「ねぇ、綾香、鍵ないの?」
直子がこっちを向いたところで綾香はようやく冷静に戻った。
「直子もういいよ、私にかかわらないで。自分で何とかするから」
「よくないよ!!何言ってんの?おじさん顔色悪かったし、きっと心配してた。綾香今日おかしいよ、さっきからまわりばっか気にしてるし」
まわり…そうさっきから私はずっとまわりを気にしてる。でも何も変わったことがない。あいつの手先も、親だっていない。
昨日の夜あんなことがあったのに、ニュースにもならないし、警察もこない。近所の人だって…。
綾香の頭の中に不安が沸き起こった。
まわり…そうさっきから…私近所の人誰も見ていない!!
嫌な予感が綾香を襲い、お隣の金森さん家に走った。
慌てた様に直子が追いかけてくる。
「急にどうしたのよ、綾香!!」
ピンポーンピンポーンピンポーン…。
返事がない。
そんな、まさか。
お願い出てきて、金森さん。
しばらくして綾香の耳に声が聞こえた。
「はーい」
パタパタ、ガチャガチャ。
「綾香ちゃん、おかえりなさい。待っていたのよ」
「え…」
金森さん無事だったんだ。でも待っていたって?
「あら、直子ちゃんも」
「もう、綾香びっくりさせないでよね、金森さんにご両親のこと聞くならそういってよ」
後ろに息を切らせた直子が腕を組んで立っていた。
私の思い過ごしだったんだ。
金森さんが無事でよかった。
その後、混乱した頭で直子と金森さんの会話をまとめると、どうやらお父さんとお母さんは遠い親戚の法事に行ったことになっているらしい。
「綾香が頭を冷やして戻ってきたらよろしくお願いします」と金森さん家に電話があったみたいで、金森さんは私を待っていたらしい。
綾香は我に返って、首をふった。
「いえいえ、大丈夫です。私一人で何とかしますから!!」
金森さんを巻き込めない。
「でも、女の子一人で家に置いておけないわ」
優しい金森さんも一歩もひかない。
「なら、綾香を私の家に泊まらせますよ!」
気付くと直子が満面の笑みで私の腕を掴んで金森さんに叫んでいた。


散文(批評随筆小説等) PIGSTY④ Copyright 暗闇れもん 2009-11-02 17:35:49
notebook Home 戻る  過去 未来
この文書は以下の文書グループに登録されています。
壊した世界