月の子守唄
夏嶋 真子


眠れよい子よ
月がほしいと泣く君よ
闇夜の空に手を伸ばし
きつくきつく握っても
月はその手をすり抜けて
君の心を絞めつける。
ほしいほしいと泣けば泣くほど
月は君を支配して
君は夜にうずもれる。


眠れよい子よ
月が遠いと泣く君よ
ふわりひらいたあの花に
降りた夜露をごらんなさい。
花の雫のひとつにも
月が宿っているでしょう。
花は黙って咲くだけで
月を手にしているのです。
君を手にしているのです。


眠れよい子よ
花がほしいと泣く君よ
花をつんではなりません。
つめばたちまち花達に
君の心は囚われる。
そっとそっと手をひらき
すくった涙のその中に 
花は咲いているでしょう。
月が浮かぶことでしょう。


眠れよい子よ
数えるべき羊はもういない。
月の光に目を閉じて
お眠りなさいな、お眠りなさい。
花の香りに包まれて
お眠りなさいな、お眠りなさい。
君のまなこのその奥で
月は降る降る。
花が降る降る。


眠れよい子よ
ねむれねむれ


月が降る降る
花は降る降る


ねむれねむれ
眠れよい子よ






自由詩 月の子守唄 Copyright 夏嶋 真子 2009-10-17 14:59:44
notebook Home 戻る  過去 未来