ニュースが届く

地球の裏側の海岸から勧喜に沸く人々の声が聞こえる
真っ青な海と太陽の陽射し
美しい瞳のきらめき
少し離れた先では 小さな家々が並び
土肌の見える道を 子供たちが走り回る


朝を迎えた都市の広場
早くから人々が集まりスクリーンの前で
固唾を飲んで見守っている
高いビルに囲まれた 都会の小さな一角で


夕方 街の中央部の美しい宮殿広場で
人々はお祭りのように騒ぐ
大きな黄色い風船が跳ねて
歌や演奏で鼓舞している


深夜 こちらは鮮やかに彩られたタワーの下で
目を輝かせた人々がひしめいている
満員電車のようにすし詰めになって
熱気と興奮に挟まれていた






飛行機で何十時間の旅だろう
各地へと映像を撮りに出かけて行くのは
昼も夜も朝も夕方も
まるで全てがひとつになれるかのような
特別な一瞬じゃないか





そう 言葉は様々に異なるが 
起きている出来事はたったひとつである
しかし残念ながら
何千 何万 何億もの瞳を通した時
それらはまるでプリズムが分光していくかのように
それぞれの地へと駆け巡る
丸い地球を二分三分して
三角や四角に見るように
まるで大昔の人間たちが
伝言ゲームしながら 
様々に思い描いていたかのように
全然違って見えている可能性もある




カメラのレンズは驚くほどに発達し
通信衛星がいくつも空を飛んでいる
インターネットは国境を超えて
ロケットは未知の惑星をも被写体にした
けれどもこの地球上には
写らないものがたくさんある




空から見ると人間が暮らしているのは
ほんのわずかな部分に感じるという

高い山の連なりや
大半を占める海の大きさ
けれども
地表へと降りてきてやっと見えてくる
山と山の間の
わずかな隙間に
のこぎりのような入り江が成す
ささやかな襞の内に
凍える大地の
ほんの薄皮の部分に
糸のような川の
寄り添う影に

まるで微生物のように
小さな生物社会を形成して
知ったような顔をして
流されていく記憶の中で
人間は 日々の出来事を
小さく小さく切り取っては
わずかな社会でこっそり回し読みしているだけかもしれない
なんて 様々な記事に揉まれ揉まれて そう感じたりもするんだ


今日 知り得たことは何だったのだろう



時折 様々なニュースが遠くなって
星々が懐かしく見える時がある















自由詩 ニュースが届く Copyright  2009-10-14 23:30:22
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