夜汽車
たりぽん(大理 奔)

夜汽車に揺られているということだ
どこかから離れて
どこかへ近づいていく
珈琲を飲み干しただけの私は
すでにさっきまでの場所にも居ない
どこにも居ないのに、ここにいる
誰かの居なくなったそらを
稲妻が走っても
そこにいない何かには
何の関係もない
私にとっては
夜汽車に揺られているということだ
もうないものから
逃げることはできない
ないということが
すべてにひそむということ
草いきれだらけの堤防を
はしっても走っても
星座はかわらないのに
じっと座って
流れる光を追っていると
東の空から白い星が昇ってくる
ああ、まるで
夜汽車に揺られているということだ
改札の車掌が現れて
乗り越しの朱印を手のひらに刻む
おりることはかなわない
ひそむものにとらわれ
眠れぬまま
夜汽車に揺られている




自由詩 夜汽車 Copyright たりぽん(大理 奔) 2009-05-07 00:54:48
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