はこばれるいきもの
因子

「期限、切れてるよ」
で、笑う、
そのレスポンスが
現実であると
人の中で生きていると

赤いイヤホンが
耳をふさぐ
電車ではいつも
ドアの横に立つ
ひとりきりであると
人の中で生きていると

かたまりになって
ひとつの細胞になってレールの上を走っていく
窓の外にひとりも
知っている人がいないから
あれが現実なのだか
わからない

どこで乗ったのか
もう思い出せない
本当は最初から
私はここに立っていて
生まれてからいままで
ここから 外をみていた

手をふる人のひとりもいないから
いつまでもここから外をみていた


自由詩 はこばれるいきもの Copyright 因子 2009-05-02 14:23:50
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