彼方
岡部淳太郎
ずっととおく
あちらのほうへいってしまった人が
てをふりつづけているようにおもえる
そのしろいすきとおったてのひらが
やみのなかできょりとともに
うすくなっていきながらも
きえずにまだみえているようにおもえる
あるいはまたとおいえんらいの
きゃくのように私たちのいる
ばしょへやってきてなにかを
おとしていくようにおもえる
ずっととおく
あちらのほうでいまその人は
なにをおもっているのだろうか
ゆれるやなぎのきのようにゆれる
てのひらのいめーじのむれが
かつてのきおくとまざりあっていくようにおもえる
私たちはきっともともとばらばらに
きりはなされたいのちであり
それがいままたこうして
あらたにべつのやりかたで
きりはなされたようにおもえる
ずっととおく
あちらのほうへいってしまえば
こちらのほうとむすびつけるものはなにもない
私はいまもまだてをふることができずに
じぶんのてのひらのしわをみつめているが
あの人は私たちとはちがういのちに
なってしまったようにおもえる
そんなとおいいのちが
いくつもやまのむこうに
ばらばらにたたずんでいる
そんなふうにおもえるのだ
(二〇〇八年十二月)
自由詩
彼方
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岡部淳太郎
2009-04-15 22:08:31
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