雨後と彼女の物語
ススメ

雨上がりの鎖がゆらいでる
虹は公園に突き刺さり
今は残された赤が僕を染めている
踏切が何回鳴っても
影が3倍に伸びても
それでも鎖は揺れて、震えを続け
絡まる水滴は錆色に指を染める
囓ると親指は苦みと鮮鉄の味がした
彼女は昇りきれたのだろうか
遙か丘の煙突
葬煙はたなびくのを止め
炉の火が落ちる
星と共に周囲が冷える
だけど虹は暖かいまま
煙草に火を付け
乾いた鎖を手放し
砂場を蹴り立ち上がる
彼女は
雨が好きだった
虹も好きだった
なら
雨と虹になった彼女のことだから
もう会えないと思い出すたびに
僕の瞳に降りてくる
意地悪な彼女のことだから
僕を泣かせて強くする




自由詩 雨後と彼女の物語 Copyright ススメ 2008-10-28 21:45:41
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