新しいスニーカーを
ススメ

鉄塔が濡れています
月の飴玉のせいでしょうか
秋の星の下
スニーカーで
シャリシャリと恋石を
磨りつぶしながら歩みを続けます
続けることしかできません
夕色に光る黒髪が
踵を返して夕凪になりました
夏の居間の簾(スダレ)越しに見える
冷えきった陽炎が
ぼうっと眺めていた
僕の頬に畳目を刻んだように
雪を踏みしめています
シャリシャリと雪下の恋石に
足を滑らせながら歩みを続けてします
続けることしかできないんです
桃色に染まった頬色が
振り返ると桜色になりました
春の花粉のくしゃみに潤む
緩みきった涙腺が
ぼうっと眺めていた
僕の頬に一筋を刻んだように
恋石を磨りつぶしました
素足の秋は悪くはありません
凪は終わり空は高く
鉄塔は乾いて
残月は硬くて
秋の空の下
新しいスニーカーを買いに行きましょうか


自由詩 新しいスニーカーを Copyright ススメ 2008-10-17 23:07:00
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