きつね雨
佐々宝砂

その鏡に映るのは私だが
その姿はあまりにも美しい

十六歳の私は扉を開け
そして二度と戻らなかった

その姿はいまだ保存されているが
その言葉はあまりにも醜い

あざらかな夕映えは
釣りたての鯖のように
生きながら腐り

百六歳の私は扉を閉め
そして再び戻り来るだろう


自由詩 きつね雨 Copyright 佐々宝砂 2008-06-24 02:49:38
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