不思議な風 
服部 剛

昼食を終えた 
車椅子のあなたを 
ベッドに寝かせ 
おむつを開けば 
あふれるほどの排泄物 

「先輩ちょっといっしょにお願いします」 

腕っぷしのいい先輩がやってきて 
拘縮した両膝をぐいっと開く間に 
ぼくは必死で腕を伸ばし 

お湯で絞った 
襤褸っ布で 
すべてを拭き取る 

この手が少々汚れようと 
お構いなしで 
ひたすら拭き取る 

おむつを、閉じる。 
ずぼんを、履かせる。 


「 きれいになってよかったね 」 


ふぅ〜っと 
額の汗を手でぬぐう 

いつもは「愛」になれない 
弱虫のぼくが 
微かな「愛」にふれたような 

ぼくと先輩と、あなたの間に 
ふしぎな風が、開いた窓から 
吹き抜けた 








自由詩 不思議な風  Copyright 服部 剛 2008-06-16 21:43:29
notebook Home 戻る  過去 未来