春の眺め

春の陽に
野原の草がきらきらひかる

菜の花が揺れ
ペンペン草が大きくなる

ホトケノザも
紫色の小花をたくさんつけて

たんぽぽが
黄色のブローチのように
地面をかざる

団子虫が
障害物競走のように
顔を出しては
またもぐり

天道虫が
雲ひとつ無い
大空へと
飛び立ってゆく

白い梅は
手をひろげたように
満開に咲き

桃色の枝垂れ桜は
ビーズののれんのように
風に揺れている

信号機の音が
天高く響き

飛行機雲が
どこまでも
伸びてゆく

遠くの工場から
煙が立ち

山の向こうへ
小さな自動車が
登ってゆく

その手前を
カタンコトンと
小さな列車が
すり抜けて


そのもっと手前の
地面からは
名も無い
小さな草の芽たちが
あちらこちらから
顔を出す


それが
春の眺め


ぼくんちのいぬが好きだった風景






自由詩 春の眺め Copyright  2008-03-25 20:53:00
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