きみが新月を書いた日
草野大悟

ぼくは、
両手に新月を持ち
きみの
右横に、

眸は
きみの車椅子に
右肘を
すこしばかり
遠慮深げに乗せて、

拘縮し
折れ曲がった
きみの左手の横に、

ちいさく
ちいさく
Vサインをして。

井下PTは
とってもうれしそうに
誇らしげなきみの
右横に、

きみが
新月を産み出すときを
だれかが
そっと
デジカメにして、

午後三時十五分
病院の書き初め大会で
にっこりと誇らしげに
みんなの真ん中で
きみが持つ新月が

スタッフや患者や
その家族やみんなの
暖かい必死さを
煌々と照らしている。


自由詩 きみが新月を書いた日 Copyright 草野大悟 2008-03-04 21:33:09
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