羊水

高架下の
冷えたコンクリートに
みみを添えて
こうこうとひかる夜の電車の
進む方向を
聞いている

せわしなく交差する線が
夜へと潜る
瞬間
手にするのは
あざやかに灯るうたごえと
ふやけた足取り

どうしてか 皆
帰る場所を探している



揺れ みじろぎ
やわらかに濡れた床を蹴りあげ
そして 泣く
開いたくうかんへと歩き出す
とおりの所作から生まれる
ひあいを 今
わたしはうたえるだろうか



節度を知らないかたくなな指は
あまやかされた声を
あやめられないまま
じっ と
撫でている


自由詩 羊水 Copyright  2004-06-24 18:55:13
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