線の街
あおば

            2003/09/14



太陽光線が嫌いだからって
夜にだけ生きるわけにはいかないと
伝説の歌舞伎役者の
目玉のまっちゃん
大見得を切るんだから
もうキリキリ舞いするしかない唐変木の
ぼくねんじんはどうして好いか解らない
けど
神武景気に
浮かれてたので
鍋底景気の恨みを買って
爆破された外務審議官の自宅にも
戦場のアリアは聞こえないけど
ぼくは
G線上のアリアがあれば
他には何もなくても構わないとうそぶいて
焼け野が原に西日が差して
イギリス製の古い電気機関車
デッカーEF50型が
東京駅のはずれで
今晩中に回送しなければならない
無くなったはずの
特急平和号の到着を待っている

1950年代の東京環状線内には
大正時代の焼け残りの
うす茶色の低層住宅の群が
どこまでも続いている
不思議な静かな佇まいも
夜になると
森永製菓のエンジェルたちが輝いて
渋谷五島プラネタリウムにも
新しい星座が来るのを待っていた
敬虔なアメリカ人の青年たちは
理由無き反抗を企てて
ロックンロールの波にかき消され
太平洋上には
価値のあるものは
なにもなくなってしまったようだ
だから
ながいあいだ
格好いい鎖国という名で
経済封鎖された後の
おきゅぱいどじゃぱんの
海の底に隠しておいた
売れ残った
パールカメラを買い求め
行方不明になったままの
君を写しに行こうかと
ちょっとだけ
考えている




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自由詩 線の街 Copyright あおば 2007-11-15 19:35:13
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