そう結局は深夜ひとりで眠る、それだけのこと
たりぽん(大理 奔)


ピアノのあしは楽器を支えているのか
それとも音楽を支えているのか
ギターをかき鳴らす仕草は
そのあしに似て、共鳴する独り言
マイクを持って空を指したとき
ひとはただのマイクスタンドでしかない

心地良い言葉で傷つくように
騒がしいアイリッシュバーでF&C
空々しい西の海風のような
奇妙な楽器をバイオリンと呼び
そのことで満足した女性が
微笑みながら耳を傾けている

   シェリーのあとのギネスはすこしぬるくて
   恋人と会えない夜の娼婦のキスに似ている

ケチャップが甘すぎる
僕らの血はもっと塩辛いはずだ
二本のあしはからだを支えているのか
それとも心を支えているのか
音楽はどこにあるのだろう
言葉も、どこにあるのだろう

思うことに技術はいらないはずだ
不器用な言葉をほんとうで紡いだとき
二本のあしは楽器を支え
言葉は温度になり、光になる
目の前の誰かにそっと差し出す手のひらが
暖かいものに触れられれば

それがとても嬉しいから
最後はひとりで缶ビールを開けて
マイクを持って空を指すような
そんなかっこうで眠りたい




自由詩 そう結局は深夜ひとりで眠る、それだけのこと Copyright たりぽん(大理 奔) 2007-11-05 01:10:45
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