波、背に寄せて
たりぽん(大理 奔)

遠いのは
距離じゃなかったのに
測ろうとしてしまうから
道のりはわからない
暗闇をいいわけにして
風に吹かれる案山子
守る実りは刈り取られ
朽ちていく
それが老いるということだと
思いこませたのは
あの鳴き声、森の奥の黒い鳥
海にむかって鳴くと
飛砂がのどを灼くから
あいつらはいつも
波に背を向けている
遠いのは
距離じゃなくて
張り付いた影に向き合う勇気
目を細めて
風にむかえば
見えるだろ?
おまえの乗る小舟が
たとえ浅瀬で座礁しても
本気で漕ぎ出せば
だれも嘲笑うことはない
案山子を背負い
距離ではない隔たり
薄暗いその道程を
漕いでゆけ
飛砂が涙を乾かしても




自由詩 波、背に寄せて Copyright たりぽん(大理 奔) 2007-10-29 00:15:13
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