空には関係のないこと
たりぽん(大理 奔)

   キレットの真下の残雪で
   オレンジ色のジャケットが
   タルチョのようだ
   鳥たちの羽ばたきの音で
   あちらへと招いている

おまえはもはや
ことばだけになった
どんなひかりもはっせず
げんのひびきにもうたわず

   あるいは氷河の先端
   崩壊津波で
   水中に羽ばたいた
   羽根のない生き物を
   わたしは人と呼ぶのだ
   近づきすぎた
   わけも聞かずに

おまえはもはや
わらばんしのうえのざれごとになった
どんなたいおんもつたえず
なんのにおいもしない

   春になると腐っていく
   そして、そこから生まれるものがあり
   私は生きるために
   新しい名前をそれらにつける

   指先は
   そうやってめぐっていく
   摂理から遠ざかるため
   本能へと近づくため

だんりゅうがはこぶだろう
かいそうがゆれるあさうみへ
ことばのいらない
ことばだけのおまえが
ことばにならないほどの
あおいそらに
いぬかれるために




自由詩 空には関係のないこと Copyright たりぽん(大理 奔) 2007-09-16 15:52:04
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