ユーリイ・シンドローム
たりぽん(大理 奔)

砂まじりの夕焼けが
河口の水面を鏡にして
車のクラクションまでが
赤方偏移すると

空がどこにあるのか
行方を見失ってしまい
だんだん宇宙になるその正体を
冷たく知ることになる

鏡像の銀河に波紋を残して
沖に出て行くイカ釣り漁船たちの
十連の明かりの群れが
沖でまばゆく放たれれば

  月の天文学者たちは
  地球に大きな虚ろがあって
  真夜中には星が透けて見えるのだと
  騒ぎ立てていないだろうか

今夜までもが
境界線をおぼろに失い
真昼は反転することを
僕は眩暈で、気づく

何もかも見失う
うそっぽいまぶしさと
何もかも見失う
息苦しい暗闇と


  意味も無く輝く光に
  伸ばしてしまう
  その右手と




自由詩 ユーリイ・シンドローム Copyright たりぽん(大理 奔) 2007-09-10 20:28:09
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