イルミナ
一般詩人-

「加藤のヤツ、やにを塗ってないバイオリンみたいになっちまった」
三上の靴紐がゆっくりと結ばれてゆく
まっさらなカセットテープを再生するような精神状態の時は
靴紐を結んでいる味がしない
そしてそんな日の夢の中で
靴紐を結ぶ音が大音量で
俺を締め上げにかかる

三上の床はとうに抜けている
何がにくいのかあんなにフィルターを噛み潰し
いつものように左の頬が痙攣を始める
放熱しきれず焼き付いちまった内臓
毎夜宿便をひるらしい

「塗ってやれよ、やに」
三上
やおら立ち上がり加藤のつむじにやにを塗りつけた
加藤、独奏
三上、合奏

部屋の隅の座敷わらしが恐慌状態に陥り
うちっぱなしの月光を反射した瞳が
緩慢に気絶した


自由詩 イルミナ Copyright 一般詩人- 2007-07-24 00:02:20
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