誤報+光彩+波止場
一般詩人-

+誤報+

夏蜜柑色の
カーブミラーに
映る
途方にくれた宵の
ちっぽけな存在感が
ちっぽけに健やかに
廃している

森の陰でぐったりと元気な蕨を折る
麦藁帽子の奥が宇宙のように暗い

夏の奥深くから
蝉の咆哮が聞こえるのだ

そうあの日
たった一匹で鳴いていた誤報が
カーブミラーの中で俺を見つめ返している

どこかでかつて聴かぬ祭り太鼓が
少なくともそこに俺はいない

ファールボールがカーブミラーに飛びかかり
破片が花火のようにはじけた

++++++++++++++++++++++++++++++++++++

+光彩+

ありえたかも知れない音色を聞きながら
ありえたかも知れない生活を夢想していた

もちろんそんなものは砕け散っていて
俺はバラックに据え付けの
電気コードだけで世界に紐づいていた

今からその音色で
トムとジェリーに出てくる
チーズみたいな穴を埋めるのか

窓から見た世界は
どうせバラックじゃねぇか
全体重をかけてローキック

光に浸かれ

おまえがあこがれた世界を
おまえのものにするために

++++++++++++++++++++++++++++++++++++

+波止場+

線路が水没したため
駅のホームは波止場になった

駅員が敬礼しあう朝の風景は変わらないのだが
やってくるのはことごとく屋形船であり
律儀にツーマンセルである

朝から赤提灯
船内は既に宴会
屋形船箱乗り
乗れや乗れや海までゆこうや
出勤する気ないだろアンタ等

海風に吹かれながら
透き通る線路を
その向こうの摩天楼を
よそごとのように眺めていた




未詩・独白 誤報+光彩+波止場 Copyright 一般詩人- 2007-08-20 00:50:30
notebook Home 戻る  過去 未来