陽炎
海月

中途半端な記憶だけを頼りに
美化されていき君の本当を忘れていく
残されたのは自分自身の不甲斐なさ

初夏の風は何処か生暖かい匂いがする
排気ガスと灼熱のコンクリ
歪む陽炎に誰かの影が混ざり合う
麦藁帽子が空高く舞う
遠くに流れていく想い

何を求めているのでしょう
何も求めていないと知りつつも
何かを求めているふりをして
今日を昇華していく

大きな夢や希望はないが
今の自分に絶望することもない

錆びたレールの上を静かに夜行列車は闇に沈む
擦れ違うばかりの想いを乗せて行く
夢を探す人や希望を見出す人
夢を捨てた人や絶望を味合った人

窓の外に広がる夜景の虚しさ
微かに下降していく月の満ち欠け
聳え立つ柱の壮大さ
灰色の重圧感を怯える日々

鮮明に映し出されても
触れる事を許されない幻影
近づく程にその姿を消していく




自由詩 陽炎 Copyright 海月 2007-06-10 01:26:16
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