二〇〇三年一二月十五日①
板谷みきょう

朝、彼は四十三年の生涯を終えた。
病名は、食道癌。
札幌のライヴハウスの老舗ミルクで初めて会った。

はなをかんだ後ちり紙を見るか尻を拭いた後ちり紙を見るかの話

これは、ネタである。
自分に好意を持っているか否かが、直に判る方法である。
合コンでお試しあれ。
『鼻汁をかんだ後に、チリ紙を開いて見る癖のある人って居るよね。
そんな癖ある?実は見ちゃうんだけど、君たちは?』と尋ねる。
…と、自分の事はさて置き
「そういう人って必ず居るよね。」と、そう云った癖を持つ自分とか友人の事とか…。
結構、盛り上がり話に花が咲くものだ。
ここで大切なのは、あくまでも自分は見てしまう側で有る事を強調して置くこと。
そしておもむろに
『処で、ココだけの話、大きい方(大便)をした時、拭いた後その紙を見る?』と尋ねる。
皆「エぇ〜!!」と慌て、互いの顔色を伺い困惑した状態に陥ることになる。
若しくは大爆笑となる。
中には真っ赤に俯く者すら居る。
そして暫くすると殆どの人達は、平然と
「見ない。」と主張し始め、さもそれが常識であるかの如く連帯感が生まれる。
…で、ここからが肝心。
満場一致になったその時に一言。
『洟をかんだ後に見る必要は無いかも知れないけど、お尻を拭いた後は
“キレイに拭き取れているか?”の確認だよ。
「見ない!」って言う皆のパンツって汚れてないの?』

これを話してくれた時、彼は
楽しくて仕方無いように
嬉しそうにしていたのだ。
見た目のイカツさからは想像も付かない
柔らかく温かな眼差しで

もう四年経つ。

彼とは、もう会えないけれども
彼の話と人の良さは
ボクの心の糧となっている。



彼の名前は「野本和浩」という。


参照:http://www.h5.dion.ne.jp/~catn/index.html


自由詩 二〇〇三年一二月十五日① Copyright 板谷みきょう 2007-05-23 22:37:04
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