迷い
深散

探ろうとしていたもんはなんだ
したいことは案外はっきりいつでも言える子どもだった
ずっとずっと
はじめから
自分の進むべき旗を躊躇なく指すことだけは
迷ったこともなかった
進路、選択、そういう場面で
僕は迷ったことがなかった

それでそのあとは何がしたいの?
そんな有体のセリフを吐かれても
動揺したことはなかった

それでそのあとは、それでそのあとは、
そういう設計だけはうまくやっていた
いつも何度も
繰り返し、張替えていたから

間違ったことはなかった
失敗だらけだった
失敗するたびに綻びを直して
また一歩だけ後ろに下がって
進みなおして平気な顔でいた

安定しているのに
失敗が増えた
失敗しかしないようになった
結局
理想と現実との溝は
日に日に広がっていく

手付かずの夢は
見知らぬ現実に繕われて
どこかの夢物語になっていく

これでいいのかという自問は

まるで普通みたいで、いい気分だ。


散文(批評随筆小説等) 迷い Copyright 深散 2007-03-09 16:47:19
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