寄り道の先の亡霊/ホロウ・シカエルボク
 
以下の方がこの文書を「良い」と認めました。
- レタス 
- アラガイs 

語る登場人物として歩きながらにしていつのまにか気絶して倒れているという設定が持ち込まれるのもこの方の特徴のひとつです。それから得体の知れない女や男たちから理由もなく殴打される。この攻撃的な人物描写がときにはピグミーやバルタン星人であってもいいわけだ。亡霊というのは主体の思うままに姿を変えるからな。と物思いに耽るときには寂れた路地裏のバーの灯りが点滅する旧市街の通りを歩いていた。ポマードと安価な香水が鼻につく危険地帯だ。ジャケットのポケットにある財布を確認して奥深く押し込んだ。端からにぎやかな喋り声が聞こえてきて細い階段の二階から酔いどれた男女がもたれあい肩を抱きあいながらガタガタと下りてきた。こんな鈍い光景を目にしたときには必ず思いだすことがある。天ぷら屋の出前をした帰り道、道路の脇に1台の乗用車が止まっていた。その側を通ろうとするときに中から女の呻く声が聞こえてきた。どうしたのだろうと傍に近寄っても薄暗い車内はよく見えない。ただ何やら二体の人物らしき黒い姿が蠢いていて、窓側に腰掛けた白い肩を震わせていたのは紛れもなく女だった。~助けて~頸はうなだれ低い地鳴りのような声で一瞬こちらに眼をやった。短めのワンピース。明らかに飲み屋風情の女だ。薄暗い運転席はよく見えなかったが、女は鼻から血を流していた。巻きこまれたくはない。後ろ髪を引かれる思いでその場をやり過ごしていた。このことは店の連中には誰にも言わなかった。もう宵の口は過ぎているというのに。
※人生の道先案内人なんていなかった。路地は寄り道の連続で遠廻りばかりして辿ってきた道。今でも宵闇が近づくとあの街には亡霊たちが犇めきあいにやってきます。 
批評などは気にせずに書かれておられるのでいつも気軽に拝見いたしております。敬具



---2024/03/10 00:23追記---
- おぼろん 
 
作者より:
〇レタスさん

ありがとう。

〇アラガイsさん

ありがとう。

---2024/03/17 22:06追記---

近頃の亡霊たちは貪欲すぎますね。
しかし、デパルマの映画みたいなワンシーンですな。

〇朧月夜さん

ありがとう。

〇右左さん

ありがとうございます。

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