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青い月が遠くから見ている
私たちを
真昼間の
ふとした瞬間
あらゆる雲がなくなって
夏にはニッコウキスゲが咲く
あの稜線があらわになって
その雪肌を見下ろすように青い月が
遠くの空の上 ....
昼飯が終わって席に帰ると
閉じたパソコンの上に電卓があった
そんなところに置いたつもりはなかったが
なんだか光って見えたので僕は手にとってみたのだ
いつも使い慣れた電卓は実は僕のものではない
 ....
それはそれは奇遇だった
女は白いシャツを着て
新しい職場で熱心に働いていた
髪は赤く、短くなって
かつて応分に満ち満ちていた肉は
適度に削げ落ち
艶のない頬で笑うその女は
相変わらずの長 ....
女の脂肪は仮構だと友人はらくらくと言い放った
剥ぎ取って
愛して
悔やんでも悔やみきれない自由を
彼は
らくらくとどうしようもなく言い放った

夏の夜はすかっりと光を抱き取り
もう誰に ....
テレビをつけると
いつの間にかスポーツニュースが始まっていて
きっといつか見ただろう中年の男が
神の立場で
野球をカミカミ語っていた
もうすっかり名前も
投手だったか野手だったかもわからな ....
矢車草が咲いた
どこに行くのか
よく判らない
この道の辺に咲いた

青い小さな草は
私の歩みにしたがって
くるくると
風を孕んで
ゆらゆらとゆれる

お前の白い太腿は
この
 ....
お風呂場に
牛乳色の朝日がさして
白い背中は
どれもみんな
かあさんのようだ
湯船の湯気はぷかぷかと
日曜の朝のスープの湯気だ
温かなおいしい匂いがする

お風呂場に
ぶどう色した ....
もし
どうしても
どうやったとしても
このゆうやけが
おわらないとしたら
わたしは
あなたに
あなたは
わたしに
なにを
はなせば
いいのだろう

もし
どうしても
どう ....
さくらが満開になる
午後
雨になる
重力は終焉の暗喩として
天気は
午後
雨になる

君の湿った指が
きっと僕を選択して
僕に伝える文字
操作
メールとして僕の手元に来る

 ....
遠くに真っ赤な窓が見える
紫色の夕暮がだんだんと深い灰色になる時間に
遠くに見上げる団地の窓が
ただひとつ真っ赤に染まっている

僕とお前はその窓を見上げて
ゆっくりと二つのカゲボウシにな ....
手のひらに溺れかけた金魚を握って
少年の僕は旅立つ
朽ちかけた恋を語る老人の脇を抜けると
傍らには黄色い看板の中華料理屋があって
赤い文字で書かれた暖簾の奥からほとばしる いい匂いだ

手 ....
背伸びをする君に
降りかかる粉雪のような時間が
私の足元にはいつも堆積している

鬱蒼とした木立の中に
降りそそぐ冬の日差しのような時間が
私を背面から
ぐさりと刺して
ずるりと通り過 ....
あったかいご飯に
かつお節をかけると踊る
ように踊りたい
と思うのだけれど
音楽がない
そういえば
動物園の温室では
数百もの蝶が飛んでいて
ダチョウは飛ばない
ゾウも飛ばない
ア ....
はブラシが毛羽立ってしまった
もうすぐ今年も終わろうとしているのに
はブラシが毛羽立ってしまった

夏に出張に出かけた折に
買った
青い
はブラシ

彼が僕のそばにいる間に
僕はた ....
愛する女よ
お前は背が高い
  ただ夕暮れるだけの
  木の間に風が吹くだけの
  音楽
  濡れたアスファルト
  という名の酩酊
だから誰よりも影が長い
チューリップの茎切り落とすきみひとり満たしきれない刑罰として

明日から黄色い花のカップにはお日様だけをそそぐと決めた

春の日と呼んでみたけど私の影はきみの影よりずっと寂しい

長す ....
もう雨が降ると息が白い

プラットホームは痛いほど凍てついている

出来損ないの私の影を穿つ雨

午前六時三十分に青い電車に乗る人 他人の朝

水溜りよ青は無残に散乱する

どこへ ....
萎えてしまった
すっかり萎えてしまった
鶏の手羽を酒と醤油で炊いたものを
ラスカルの皿に一盛り食べながら
黒霧島を飲みながら
お湯割で飲みながら
テレビを見ていた
テレビではカンニングの ....
家に帰ろうとすると思った
遠くで僕が降りたのよりも
もっともっとあとの電車が
レールを軋ませて走ってゆこうとする
街灯がひとつ明滅していて
長い桜並木の
もうすでに長く葉桜のままの道を僕は ....
仕事に疲れたおまえが
こんなわたくしの部屋に帰り着くと
雨にぬれたおまえは
いつものように静かに服を脱いだ
行き場のない案山子のようなジャケットを
お前はハンガーにかける
遊んでもらえない ....
夏が去って
私は久しぶりに襟のあるシャツを着た
それでも秋風がいつのまにか
襟元から心の奥の方へとしみこんでくる
夏は毎日飲んでいたアイスコーヒーの器を
背の高い
細いグラスを洗いながら
 ....
あの娘が目じりを下げて笑うとき
あの娘の細胞はすべて等しく太陽となる

葉陰の虫が鳴いていて
昨夜はあんなに満月で
それでも逢いたい人に逢えなくて
淋しくて泣く女がいても

あの娘が目 ....
タマゴちゃんはちょーかわいい
僕は迷わずにゴマ粒でタマゴちゃんの顔を描いた
茹でたてのタマゴを丁寧にむいて
でもタマゴちゃんの目はもっともっと大きいし
いつもニコニコしていたんだよ

タマ ....
だらだらと
ソフトクリームが垂れるみたいに
だらだらと夏
この一日を生きていて
気持ちいい

後悔と偽悪の間に
うすく蝉が鳴いて
昼間になると
うすい雲が空を
覆う

ぐずぐず ....
眼下には海の藍
振り返れば風が岩を離れ
大声で歌いだす荒野
アイスボックスから取り出したジンにレクストリームを数滴
緩やかな緑
車はあいつに借りたワゴンRで
今日は帰るつもりなどない
松 ....
雷雨の夜に
またお前の魂はくっきりと日に焼けて
幼い胸板をさらしている
いくつになっても
お前の魂は脆弱で
いつまでたっても子供のようだ

そういえばひまわりが咲いていたっけ
あのお前 ....
私は夏雲のあるこの空に
人差し指を差し込んで
この青空の
その底にある
人肌の群青に触れようとする
そのぬくもりは昔日の
小さなおまえのぬくもりに似て
あわあわと崩れそうにゆれる
いつ ....
香気がどこからかぼくの指にしみこんできた
朝日はいつの間にか木陰を
ありありと作るくらいに大きく育って
父は病んだ体を褥に起こして
指先から瑞々しい桃の果汁を滴らせながら
桃の果肉を噛み砕い ....
静かすぎるよって
背泳ぎをしながら呟いてみると
空には立派な
夏らしい雲
陽に焼けた
男と女の睦み合う
そのすぐ横を泳ぎ去るとき
波立つ水から
微かではあるが
女の性愛の匂いがして
 ....
藤の実が剣のようだ
ものすごい湿気とものすごい気温の中
藤棚の下で目を閉じて
何も見ない
藤の実が剣のようだ
おそらく
噴水の前を通り過ぎる自転車のベルも
風鈴のようだが
でもそれはも ....
落合朱美さんの黒田康之さんおすすめリスト(31)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
新年詩二〇〇七- 黒田康之自由詩907-1-2
電卓は- 黒田康之自由詩406-11-12
夜空は星に刻まれてゆく- 黒田康之自由詩606-8-3
乳房〜その1- 黒田康之自由詩306-6-21
兎女- 黒田康之自由詩506-6-9
矢車草が咲いた- 黒田康之自由詩606-5-27
温泉にて- 黒田康之自由詩206-5-22
満開の藤の下にて- 黒田康之自由詩706-5-13
さくらのはなと指と雨と- 黒田康之自由詩306-4-10
ゆうべの闇の恨み言- 黒田康之自由詩106-3-9
手は_そしてまた言葉は- 黒田康之自由詩106-3-2
時間〜その1- 黒田康之自由詩1*06-2-4
ねこまんま- 黒田康之自由詩405-11-25
はブラシ- 黒田康之自由詩205-11-22
秋の景色【改訂】- 黒田康之自由詩105-11-19
チューリップ刑罰- 黒田康之短歌8*05-11-11
自由律十句〜青い電車〜- 黒田康之俳句305-11-8
秋枯れ- 黒田康之自由詩105-10-26
take_it_easy!- 黒田康之自由詩305-10-16
秋の乳房- 黒田康之自由詩505-10-6
首筋の紅- 黒田康之自由詩205-9-28
夕方を前にして- 黒田康之自由詩205-9-19
タマゴちゃん- 黒田康之自由詩105-8-31
だらだら- 黒田康之自由詩1+05-8-20
野人の荒野- 黒田康之自由詩105-8-14
雷雨の夜に- 黒田康之自由詩205-8-9
今日生まれし者へ- 黒田康之自由詩1405-7-30
初物の桃- 黒田康之自由詩705-7-23
背泳ぎにて見上げる- 黒田康之自由詩605-7-16
公園の昼間にて- 黒田康之自由詩505-7-2

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