すべてのおすすめ
他者の背中を見るように
自分の背中を見ることはできない
他者の背中を見送るように
自分の背中も見送られ
雨あがり
洗濯したばかりの
地球の匂いに包まれる午後
無風、時々背中
....
世界が揺れはじめる
そして
ぼくたちは
気づくのだ
ここが
氷山で
わずかに海面から
突き出した
ほんの一角にすぎないことに
世界が揺れはじめる
そして
ぼくたちは
知 ....
冬にすいかを食べたい
もうすいかしか食べられそうにないと言って
あなたを困らせた
今思うと
ロシアの童話にあるような
わがまま女じゃないか、あたし
あなたは
愛だというが
一抹の負い目 ....
古代飴のような
琥珀の中に
小さな虫が
羽ばたいたまま
閉じ込められている
時が止まったままの
小さな宇宙を
私は
手のひらで
そっと転がして
スイッチをさがす
人は
自分のテリトリーに
侵入者が
入ってこようものなら
たちまち
不機嫌になって
どうにかして
追い出そうとする
そのテリトリーさえ
誰かからの
借り地だというのに
長いこと
なにかを探しながら
生きてきたけれど
とりたてて
見つけたものは
何もないような
気がする
わたしは
よくばりだったのだろう
長かった夜が明ける
昏い空に
ひと ....
消毒薬で洗った
白い部屋は
どこまでも
清潔で よそよそしい
菌という菌は
すべて
死滅し
有機体は私ひとり
お見舞いにもらった
ガーベラが
いつのまにか
造花に変わる
( ....
海の底の
とある場所に
海亀の墓場があるという
大海原を
潮流にのって
悠々と回遊していく
海亀は
死期を悟ると
特別な流れをつかまえる
それに乗り
終焉を迎えるために
....
{画像=120317205808.jpg}
野に集えよ
きんぽうげ
小さき
いつつの
花弁ゆらし
....
小柄な人なら入ってしまうような
大きなコインロッカーを
開ける時
必ず怖くなる
屍体を隠しておくには
ちょうどいいと
どこからか
声が聞こえて
息をとめて
扉を開く
{引用 ....
ママの手は
てんごくのにおいがすると
五つの子が
うっとりとして
わたしの手を離さない
てんごくも
じごくも
絵本のなかに
出てきたね
てんごくに
匂いがあるなんて
知ら ....
家を出る時に
ちらほらと
降り出した雪が
そう時間をおかないうちに
吹雪いてきた
三月もなかばだというのに
フロントガラスに
積もってゆく雪を
ワイパーでどける
ラジオか ....
【食いしん坊なのです】
赤ちゃんのほっぺは
つきたての餅のようだ
誰も見ていなかったら
つい食べたくなってしまうほどの
◇
【みみず】
おまえをみつけると
つい ....
死んでいる人と
眠っている人は
よく似ています
だから
不安になって
あなたの口もとに
耳を寄せてみるのです
かすかな
寝息がきこえると
ああ、生きていると
安らかに生きて ....
道の途中で振り返ってみる
長い時間だったのだろうか
それとも
ほんの
まばたきするような
短い時間だったのだろうか
人は人と
すれ違い
時々恋をしては
大人になったふりで
別れ ....
赤ちゃんは
眼が見えるようになると
まず
人の顔を認識するらしい
丸の中にふたつの小さな丸があったら
それだけで顔だとして
笑いかけるように
出来ているらしい
そうすることで
世界は ....
雨が降っているのかしら、と
君がつぶやく
君のつぶやきは
答えを求めている時と
そうでない時があるので
それを聞き分けるのが
とても微妙であるけれど
肝心なのは
語尾のニュアンスで ....
自分も毛糸玉のくせして
プッチは毛糸玉と
戯れるのが好きだった
ふたつの毛糸玉は
所狭しと転がり回り
私は面白がってその糸を引いたものだった
小学生だった私と弟
そしてやっと歩き ....
食パンのみみが
初めて出会う言葉は
まだ星空が出ている時間から
働き始めるパン屋のおじさんの
「上出来だ」の嬉しい言葉だろう
スライスされる前は
全身が みみなので
工房の全ての音が ....
人さし指を 探しています
誰かを指さして
不幸を笑う人さし指ではなくて
指と指の先を
そっと合わせれば
心のバッテリーが静かに充電されていくような
そんな
人さし指を探しています
....
夜に心があったなら
きっと淋しい心でしょう
闇夜になるのが
淋しくて
誰かを想わずにはいられない
星に心があったなら
きっと淋しい心でしょう
たったひとりで
何億光年旅をして
誰 ....
昭和二十年八月六日午前八時十五分
ヒロシマは地獄と化した
おなかのなかで泳いでいた名もない 胎児
三輪車に乗って遊んでいた あやちゃん
竹の物干し竿に洗濯ものを広げていた 母さん
ア ....
かがり火が灯る冬の夜
どこかで
誰かが泣いています
寒々とした出窓に置かれた
ピエロのオルゲエル人形
1ミリたりとも動くことはありません
ネジを巻かれたのは
いつだったか
もう思い ....
深呼吸したら
小さな虫まで
吸い込んで思わずむせた
むせて吐いた
吐いて笑った
笑い続けたら
可笑しくて
ついに涙が出てきた
ついさっきまで
悲しかったはずなのに
ほんとに ....
去年
義母が急逝した
晩年
持病で苦しんでいて
会えば
病気の苦しさばかりで
死にたいけど死ねないのよね、と言われると
そんなこと言わないでと
答えながら
鬱屈した気持ちになった ....
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