すべてのおすすめ
くちづけは乾いていて
忘れたころに香る
五月の庭は騒がしく潤み
ひらくたび
こまかく傷ついていく手のひらで
世界を泳いでいる
まだ知らない
なにも知らない
溺れるように街を掻き ....
意味はきらきらふる星だし
正しさはもえる草原で
寝息は世界のかぜ薬
あなたの頬がやわらかいうちに
知ってほしいことがたくさんあるけれども
なにひとつ教えられることがない
だからいつ ....
ひとかたまりのきょうが
三和土でふるえている
ドアは開いてるというのに
もしかして、きのうも
ふきだまりみたいなこの部屋の
どこかに
きえかけながらいるのかな
きのうも、あし ....
ひらひらの手が
宙をおよいでいる
なめらかにあつく膨れて
むすめよ あなたは
女という呪いのなかで
生きていくことを選んだ
わたしのことをどう考える?
むすめのひざや足の裏はしっかり厚くなった。ひとり掛けのソファにすわってテレビをみているところなど、すっかり人間ふうだ。わたしは鏡をみるのがきらいになって(太ったまましばらく戻らないから)、自分の顔 ....
雨のあいまに草がのびていく
つみとってもつみとってものびていく
春は毒だ
帰る場所もないのに咲いてしまう
いつもなんか握ってる
石とか棒とか拳とか
それって子どものくせみたいで
一度風俗に勤めてみたが
最終的に
寿司屋に就職した
まいにち目にわかるほど大きくなっていくのに、娘はきちんと娘のかたちをしている。一日にすくなくとも一度はどうしようもないほど叫ぶ娘を抱いて、鏡や暗い窓にうつる自分のすがたを見せてやると、泣きながら( ....
信じられない、と言うのが聞こえたあとにもう一度信じられない、と言うのが聞こえたので私は礫(つぶて)になってしまった。弾けて路傍。鮮やかなつま先であなたが私を蹴り上げる。信じられないと言う声がまだ胸 ....
夏休みでした。水族館へ連れて行ってもらい、夕食付きのホテルへ泊まった。
水族館では、いるかの跳ねるところと、くらげの展示と、あしかのショーの最中に、濡れたあしかの肌が、おどろくほどすべらかなさま ....
背を向けて眠る
あなたのかたちを
なぞるかたちで
空洞が訪れ
わたしのかわりに
あなたを奪っていく
シーツの重みを
じっ
とみていると
だんだんと
時間が失われていくのがわ ....
あの日とよく似た景色に
ぼくは取り残されている
すこしだけみじめで
信じられないくらい自由だ
長い髪をしていた
君がここにいない
「ゆうがたにも匂いがあるね
晴れた日と
雨の日 ....
ため池に立っていると
女たちがやってきて
きのうまで愛していた男を捨てていく
濡れた靴したをすっかり乾かしてやると
女たちは
ちがう男を釣り上げて
また
立ちこめる現実へ帰っていく
男たちに
愛していると言うと
とたんにやせ細ってしまい
女たちに
愛していると囁けば
とたんに膨れ上がる
鏡にむかって
愛しているとつぶやいて見たら
鏡は粉々にわれてしまっ ....
女の子は
愛で太るから
かわいいあなたを食べきって
次の季節に出かけるの
土砂降りの日に偶然出会った。(偶然以外の出会いがあるのかどうかはまた別にするとして)都会の昼間に雨が降ればにぎわう場所といえばコーヒーショップ。人まみれのこまごました座席を一瞥して隣にしましょうと ....
あらしの夜は
あついお湯と
指を五本ずつもちよって
がたがた言うガラスにまもられながら
解体した
そとは
だんだんしずかになって
わたしたちも
きちんとばらばらになる
....
しかくい箱のなかに
丸と三角を
ひとつずついれる
それをどうするんだい
と聞くと
どうもしないの
と答える
どうもしないの
と
答えて
かなしそうにしている
尼崎を超える頃に日付は変わる
川をわたる鳥のむれも
一日分の年を取る
吊り革に群がる背広を押しのけて
酸素のうすい車輛で
どうにか息をしている
神様
今日が正しくなくても
息を ....
手のひらに
つかむと
すこし音がしたが
死骸が
おそろしく
にぎったまま
眠ってしまった
おきると
部屋じゅうに
重たい光が
あふれている
おきぬけに
大事なことを思いだし
顔をあらって
みつめようとするけれども
それはもうそこにはなく
かわりに
まずい水を
飲み干さなければならない
うたは
くちびるからうまれる
のではなく
こぼれるだけ
うたは
じぶんが
出でるべきくちびるを
じぶんでえらんでいる
うたをうたっていると
思い込んでいるひとの
なんと ....
久しぶりの雨が、何粒も何粒も、朝から夜中のいままで、つめたく道路をぬらしている。照らされるアスファルト。フィンガーチョコレートの包み紙によく似ている。静かで、しわくちゃで、でもしっかりと厚みのある。吹 ....
ビルが
あまりにもするどく
直角をつきたてている
空はよろこび
(そらはおんなか)
鳥が飛んでいる
たまに焼けながらおちてくるのを
ゆうめしにしようと
待ちうける少女
おめで ....
いち日に三人とシーツをみだし
またそのたびちがう人を思いうかべ
いったい
こんな液体の行き交いが
なにを意味しているのだろうと
かんがえてみてもわからない
わたしのあしゆびは冷えきって ....
目が痛い
目が痛い
泳いだあとで
目が痛い
見たものは
忘れてきた
脱いだ服は捨ててきた
欲しいものは
手に入れてきた
でも
目が痛い
水を飲んでも
まだ
痛い
....
クリスマス・イヴでおもいだすのは
てんちゃん
の
むかしの彼女
会ったことないけど
クリスマス・イヴに
死んだってゆうから
自殺で
去年
好きだったバンドのボーカルが
死ん ....
ぞうのとなりで
きりんのあかちゃんが産まれる
月夜、月夜
メーテルになりたかった
冷凍庫から
いちじくを出して
季節のなごりを食んでいる
月夜、月夜
だれかの
アイロ ....
求めると
ほどける
うつりこむ光をすくおうとした
てのひらに触れるのは
光でなく
影でなく
しずかな林檎
瓶をかかえて
あなたが眠る横にたっている
ふたは
なくしてしまった
起きて
なにか
当たりまえのことを言ってください
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