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仕事が遅くなった。金曜日の夜の電車は酒臭かった。渋谷始発の電車に乗り、席に座った。いつもならすぐに眠りに落ちるのだが、あまりに瞼が重くて眠れなかった。目をこすっても瞼の重みは消えない。隣に座った大柄 ....
長い間音楽を聴かないようにしていた。朝、満員電車に揺られ、つり革に手のひらを乗せ、片手で本を読んでいる。誰の声も聞こえない。電車の走る音が体中に響いている。車内にアナウンスが流れる。次の停車駅を告げ ....
走れ。
翳りの中、狭い光が照らすアスファルトの上を。
夜明けとともに訪れる、日没の予感を。
その林、海の花びら、霧を抜けて。
歩道橋が夜を迎える。
道の基点から、夕雲は暗雲へと変わる。
歩道橋は震えていた。
頑なな心に、歩道橋の震えは伝わる。
望遠郷の果て、山、川、光
乗り回す男の姿は、橋を越えたならなくなってしまう。
写真つきの、身分証の、提示を、強要された橋の下
認め損ねたのは魚。飛ぶ、鳴く。
後部座席、男は身を深く椅子に沈めて ....
軽やかなリズムで、口ずさむ。
彼女はHush HAPPY!
草原から伝えられた、世界の中心で叫ぶ声、ブレーメンの音楽隊。
驢馬、犬、猫、鶏達は、スイッチバック方式。
ブレーメンなんて夢は見なか ....