すべてのおすすめ
旧校舎の外階段を降りて
ピロティに出ることができた
夏草の熱が 猫のように腹這いで寝ていた
青い空と鳥籠は真逆に見えて 同じものだと
あなたの唇が言っていた
僕たちは暗い液で ....
硬いパンを噛むと じゅっと唾液が湧いてくる
人なれど 朝の欲は獰猛なけもの
薄切りのハムとレタス マヨネーズの酸味
奥に隠れた卵の温もりをも舐めとる
ミラノサンド
けれど熱い ....
喉を 僕は 通り過ぎて
日差しの少ない部屋に入った
時間の寂しさが近づいてきていた
まだ 早かった けれど
コップに 桂花陳酒を{ルビ注=つ}いで飲んだ
時間の寂しさが近 ....
{ルビ誤綴=ごてつ}された
この午後の陰を 歩く
哀しみも慕わしさも
あなたの唇の{ルビ彩=いろ}で 膿んでいた
{ルビ端=はな}から鋳込まれていたように
そこに ここに ....
風景が振りむいた
きりきりと ただ一度だけ
冬の 椀の 上
木立があった
冷えた池も あった
あなたが いなかった
振りむいた
震えた 溢れた ....
寒いが 晴れている
中野坂上で降りる
昼は あんかけ焼きそばにした
ベンチに腰掛け空とビルを見てた
流されていく言葉は
僕の中にあるのか世界の中にあるのか
そうした問 ....
見えないが それは
熱の蛇が 這っているのだ
かんぜんな 石を湿らせ
なにもかもが黙る
熱の蛇が
這っていくのが見えない
街はいつも 叫んで ....
瞳からのぞくと
馬たちが みえた
日が薄ぼやけ
あたりは冷えて
草の においだけが
ほそながくかがやいていき
わたしたちの
愛はきえた
....
物陰にひそんでいる、一頭の
動きののろい獣をみつめるみたいに
流れているのだろうか、ぼくにとって
あの時間もこの時間もどの時間も?
不揃いの靴たちの
....
蓬色の夜、
つぶれた{ルビ褥=しとね}に居て
夥しい数の接続詞らが
わたしの躰の至るところで
いっせいに哄笑をはじめたので
何か 訳のわからない一塊の
....
秋晴れの
空に、境界線
……らしきものが浮遊している
長いのも短いのも 互いに絡まり合って
私は 時期外れの薄着をはおり
アイスクリームを食べながら人 ....
裸の男が
岩をかかえ
緑色になっていく
渚は
ほそく長く続く
多くの声や
魂にまみれては
かなしむ
さむい納屋のなかで 菫色の図形が
次第に数を増していく 害のない菌のように
いつしか 石塀から剥がれおちた 西陽のつくるあなたの影
それは いつまでも 母屋の外に置かれた ....
あたたかいミルクを 絨毯にこぼしてしまった日
きみはゆっくりと愛していた
町を、陽の光を、そでの長い服を
きゅうくつなかなしみが胸を染める
言葉にできな ....
古い蝉が、この部屋の
窓に貼付いて乾いている
色々なものが置かれていたが
結局ひとつもとどまらなかった
きょうの月は、頼み方しだいでは
ベランダに ....
{引用= /とけた猫
コバルト色の階段をとけた猫がつたっていく、春、うつむくこと
は似合わない、踊る石と、まだ眠りから覚めない風を抱いている、
きみには。
※
....
静かだった……
禁じられていることは それほど多くはないはずなのに
ただ、いくつもの瞳だけが 土埃に塗れながら
風と風の間で何度もはね返っている
男たちの沈黙はカラ ....
いたみ。
それがひとつ、
水たまりにうかんでる。
とろとろの月といっしょに
サンダルをひっかけて
コーヒーを買いにでたり、
すこしだけひらい ....
汽車にのって
なまぬるい水筒にぼくは口をつけた
鞄からとりだしたおむすびは少し
いびつな形にへこんでしまった
ほおばりながら見まわしてみるけれど、
このなかに ....
草の皿に
いっぴきのいなごがとまっている
ぼくはいつも色んなことを
すぐに駄目にしてしまう
砂団子のように丸く脆く
君への思いを胸のなかに固めて
....
不器用な今日の夕陽が
きみの頬を無防備に照らしてる
絵に映える出来事もなく
通り一遍の言葉ばかりで、また
僕たちはサヨナラを示そうとしてる
駅へと寄せる賑やか ....
くらい魚が一匹
つめたい壁をおよいでゆく
誰かが忘れていった
後ろめたいつくりごとが
ライターの灯りに揺らめく
髪の長い日暮れ
不思議
きみがふれた
いびつな石ころが今朝、
柔らかいパンへと変わった
春の陽を白く吸って
不思議
きみがくれた幾つかの
言葉は辞書に ....
薄桃色の
柔らかなパジャマ越しに
君の左胸に
そっと僕の手を置く
温かくないけれど
正しくもないし
なんの役にも立たないけれど
君にあ ....
赤茶けた数艘の漁船が
死んだように泊まっている
コンクリートでできた堅い半島は
港と呼ばれる寂しい場所だ
秋の空の蒼い果てで
透明な名も無き巨人が
白雲 ....
正午ぐらいに
この公園の上空に
赤い飛行機がやってきて
幾つかの小石を落としてゆくのを
その妊婦はじっと待っている
背板にコカコーラのロゴが
描かれたベ ....
君は唇を震わせる
火を点けたばかりの
赤い輪郭をした石炭を
心の何処かに抱えるように
愛することは愛を傷つけ
悲しむと悲しみは消えてしまう
....
西日でぬるくなった床に
灰色のハンチング帽を落とす
埃の膜がふんわりと散って
光の白い模様を描く
リュックサックをベッドに抛って
窮屈なコートをハンガーにかけ ....
あなたの腿に
手を置く
その
柔らかさの奥に
生きていることの
鋭いさびしさがひしめいていて
ぼくの心に
さっと
一 ....
ゆうべ
きみのまとう
しろい布にふれました
それはやさしく湿っていて
かみさまの一部のようでした
ゆうべ
窓のそとでは
たくさんの雪が ....
1 2 3