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上野の美術館を出た帰り道 
焼芋屋の車が、目に入った。 

財布の懐が寒いので 
「半切りをひとつ」と言い 
小銭三枚をおじさんに手渡す 

紙袋からほっくり顔を出す 
焼芋をかじりな ....
 三月十一日・午後二時四十六分、彼はデイ
サービスの廊下でお婆さんと歩いていた。前
方の車椅子のお爺さんが「地震だ」と言った
次の瞬間、壁の絵は傾き、施設は揺さぶられ
る海上の船となっ ....
いのちの綱を両手で握り、彼は崖を登る。 
時に静かな装いで彼は足場に佇む。ふいに
見下ろす下界の村はもう、{ルビ生=なま}の地図になっ
ていた(少年の日「夢」という文字を刻ん 
だ丸石が背後の ....
世間のしがらみだとか 
上司への気遣いだとか 
余計なゴミ屑の積もった山みたいな 
日常の地面から 
ふっと、足裏を浮かべて歩いてみよう 

渡る世間の鬼達が 
幻に透きとほ ....
机の上に置かれた 
黒い本の中に 
うっすらと、顔がある 

自分の貧しさに震える私と 
遥かな昔に交した約束を 
今も語っている 

蝋燭の火が 
風にふっと、消えた 
暗闇から ....
聴く、という姿勢で 
石の上に腰かけ 
微かに首を傾けながら 
瞳を閉じる少女よ 

冬の冷たい風に襟を立て 
凍える私の前で 
風に耳を澄ます 
銅像の少女よ 

閉じた瞳の裏に ....
目の前に、ひとつの器がある。 
(天から「私」への、願いの息吹が吹いている) 
世界にたった独りの、役者として 
私は私の器を、充たす。 
のび太君はいつも 
スネ夫にからかわれては 
頭が煙の昇るエントツになるものの 
テストや体育の時間になると 
何故だか決まって、負けるのです。 

そんなスネ夫にも 
時折気まぐれの風 ....
あわてんぼうの君は 
いつも夜の電灯のつまみを 
捻り過ぎては、外してしまう 

何事も、焦ってやると 
つくはずの明かりも消えてしまうから 
電灯のつまみは、ゆっくり廻そう。 


 ....
青空に姿を隠した、謎の舞台監督 
雲から地上に垂らす、見えない糸に結ばれた 
人形達は知らぬ間に、日々の物語に笑って泣いて 
「 自分という花 」を、咲かせている。 
君の母の納骨式が行われた日の夜 
朗読会の司会を終えた僕は 
仲間達に手をふって 
高田馬場駅に近いコンビニの公衆電話から 
( 今、終わったよ・・・ )と、君に言った。 

久 ....
いつも銅像の姿で座っていた 
認知症の婆ちゃんは、ある日 
死んでしまった爺ちゃんを探して 
杖を放り出し、雨にずぶ濡れながら 
駅までの一本道を、ずんずん歩いた。 

最近、壁の前に立ち ....
幸福よ、お前は何故 
いつも私を苦しめる? 

幸福よ、お前は何故 
いつも私を試みる? 

私は只、眠れぬ夜の淵で
待ち侘びる幼子になり 
乙女の胸に安らいたい・・・ 

幸福は ....
あの塔の頂に立って 
私は何を、視るだろう。 

遠方の高見から眺めれば 
近過ぎると醜い人の世も 
小さい蟻の人々も 
昨日喧嘩した家族の憎い顔さえ 
愛しく思え 

見渡す街の霞 ....
かつてランボオという名であった 
その喫茶店は、真昼も 
赤煉瓦の壁に、洋燈を吊るし 
仄かな灯を、ともしている 

在りし日の作家が 
夭折した友と懐かしい時を過ごした店の前で 
あ ....
朝の交差点で 
信号待ちの学生が、友達に言った。 
「本当の時間割を知りたい」 

昨日話した老父が、僕に言った 
「人の体の内には、星の数程の 
 細胞が、再生を、繰り返している」 
 ....
一輪の花を愛でるのは、いいことだ。 
五月の風に身を揺らし 
花はハミング、するだろう。 

一輪の花に寄りかかりすぎては、いけない。 
細い緑の茎が儚くも 
折れてしまうことの、ないよ ....
覚えていますか? 
私達が種だった日のことを・・・ 

ふらりと寄った鎌倉の古時計屋で
無数の時を刻む秒針の音に包まれながら 
独り置かれた{ルビ勾玉=まがたま}の 
黒い瞳と、目が合った ....
試合前の練習中 
選手たちにノックしようとしたら 
突然彼は胸を抑え、 
バットを握ったまま
グランドに倒れた 

担架に寝かされ、救急車で運ばれた彼を 
原監督が、チームメートが、ファ ....
塀の上で危なっかしく
好奇心の瞳で這っていた 
三才の私 

新しい家の
まっさらな床を両手で撫でた 
五才の私 

学校という未知の国へ 
鼓動を、高鳴らせていた 
7才の私 
 ....
世界を見渡す望楼で、彼は何を夢見るか? 
広がる砂漠に現れる蜃気楼の都市で、夢の 
無い、のっぺらぼうの人々の葬列はやがて 
世界の淵の谷底へ、滑り落ちてゆく。   

( 世界は今、まな板 ....
雀等が、音符になって、弾んでる。 
米の蒔かれた、日向の国で。 

    
夜道に伸びているのは 
棒っきれの姿で立ち尽くす 
私自身の、影でした。 

深夜の川のせせらぎだけが 
無心のうたを囁きながら 
何処か見知らぬ明日の方へ 
流れてゆくのでした 

 ....
踊るように、街を歩くひとがいた。 
両手首に輪を嵌めた、杖をつきながら。 

僕の肩越しに密かな風をきり 
横切った、彼の背中はおそらく求めていない  
これっぽっちの、同情も。 

不 ....
指紋を眺めると、そこに宇宙があった。切 
株を覗くと、そこに宇宙があった。時計を
見上げれば、秒針の音が絶えず響いていた。  
日常の風に紛れていつも周囲に渦巻いてい
る、それぞれの宇宙。肩を ....
夜の冷たいベランダに出て、丸い月を眺
める。誰にも云えぬ悩みを白い吐息で呟
けば、胸底の容器に濁り積もった毒の塊
が、少しずつ、少しずつ、蒸発し、夜の
静寂に吸い込まれ、いくぶんか、胸の重
 ....
鼻の曲がった顔や 
頭から花の咲いた顔や 
横並びに展示された様々な顔達は 
新時代のモヤイ像

小さいギャラリーにふらりと 
立ち寄った僕を、和ませる 

{ルビ硝子=ガラス}の石の ....
元旦の夜のファミリレストランで 
僕が座るテーブルの、一つ向こうに 
少年時代の、友がいた。 

嫁さんと、子供ふたりと、母さんと 

父さんは、20年前の冬の朝 
突然に、心臓が停まっ ....
日頃の不摂生で 
年の瀬に熱を出し 
病院で点滴をした三日目 

今日、初めて気づいた 
点滴を吊るした棒の台車に 
歩きやすいよう 
掴まる取っ手がついてたことに 

昨日、僕は点 ....
扁桃腺が腫れて、高熱が出て 
水もろくに飲みこめなかったので 
仕事を休んで総合病院に行った 

耳鼻咽喉科の待合室で 
中年の美しい女が頭を抑え 
看護婦さんに背をさすられながら 
洗 ....
……とある蛙さんの服部 剛さんおすすめリスト(74)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
芋と言葉_- 服部 剛自由詩8*11-3-22
日の丸の旗_ーSAVE_JAPANー_- 服部 剛自由詩411-3-17
今を登る_- 服部 剛自由詩411-3-9
旅人_- 服部 剛自由詩111-2-23
不思議な目_- 服部 剛自由詩711-2-2
裸の木_- 服部 剛自由詩711-2-1
器_- 服部 剛自由詩311-1-6
ドラえもんのいない世界で_- 服部 剛自由詩310-11-28
明かりのつけかた_- 服部 剛自由詩310-11-15
あやつり人形_- 服部 剛自由詩110-11-1
銀杏の葉_- 服部 剛自由詩310-10-31
旅の始まり_- 服部 剛自由詩610-9-28
幸福ノ声_- 服部 剛自由詩210-9-28
夕暮れの塔_- 服部 剛自由詩810-9-25
真昼の洋燈_- 服部 剛自由詩510-6-24
老父の言葉_- 服部 剛自由詩510-5-27
木陰の花_- 服部 剛自由詩310-5-12
種を蒔く人_- 服部 剛自由詩210-5-10
殉職した野球人に捧ぐ_- 服部 剛自由詩510-4-9
走馬灯の夢_- 服部 剛自由詩310-3-9
塔守の夢- 服部 剛自由詩210-3-2
日向の国_- 服部 剛自由詩510-3-1
月夜の道_- 服部 剛自由詩6*10-2-16
踊り歩くひと_- 服部 剛自由詩9*10-2-8
ひとつの宇宙_- 服部 剛自由詩5*10-2-3
お月見の夜_- 服部 剛自由詩9*10-1-27
21世紀のモヤイ像_- 服部 剛自由詩3*10-1-20
幸福の食卓_ー同級生との再会ー_- 服部 剛自由詩210-1-1
新年の扉_- 服部 剛自由詩8*09-12-31
こころの病院_- 服部 剛自由詩2*09-12-31

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