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ずっこけて、転がって、這いつくばっては
立ち上がり(瞳はぎらりと、ぎらつかせ)
またずっこけて、膝擦りむいて、血糊を
なめ、それでもまだ夢を見て、今宵の夢
を見たくて ―この世界に恋がしたくて ....
ゆっくり育つ息子が
五歳にして
歩き始めたので
日曜日の公園へ連れてゆく

小さな影は、{ルビ日向=ひなた}にのびて
ひょこひょこ歩き
地べたに尻餅をついては
砂を、払ってやる

 ....
万国旗は青い風にはたはた…揺れ
園児等が駆け回り、賑わう
秋の運動会。

染色体が人より一本多く
まだ歩かない周と、並んで坐る
パパの胸中を{ルビ過=よ}ぎる、問い。

――僕等はあわ ....
実家に帰り、午睡をする。
窓外で
うらかな陽に照らされたポストが
かたっと音をたてる。
配達夫のバイクの音は遠ざかる。

そんな風に僕はいつも
待っている
昨日も、今日も、これからも
 ....
はらはらと、風に揺られて
前方に、無数の枯葉等は舞い
鎌倉の湿った土に降りつもり…

旅人はぬめり、ぬめり
幾世代もの黒ずんだ枯葉等を
踏み締めてゆく

両側の
崖と崖を削った、一本 ....
机に置いた
一人のどんぐりが
ランプに照らされ、光ってる
胸に心があるように

誰かが云った
(どんぐりの背くらべ)である中の
彼こそが
何かを識っているように  




 ....
黒光りのレコード盤が  
プラスティックケースの中で  
いつまでも、廻ってる  

ゆーるりるりるーゆーるりるー…  

傍らに立てかけられた  
紙のブルージャケットの  
ソニー ....
なけなしの金を 
銀行ATMから下ろして 
伊東への旅に出たら 
財布も口座も 
すっからぴんになってしまった 

安月給から食費だけは 
嫁さんにあずけているが 
幼い息子と3人で  ....
木々の葉が周囲に
ざわざわ鳴っている 
{ルビ藁葺=わらぶ}き屋根の山門が 
中天の日に照らされている 

あの門を{ルビ潜=くぐ}った向こうの 
石段を上ってゆけば 
一体何処へ導かれ ....
デクノボウのまま突っ立っていた、あの日の青年。 
谷底の闇でうずくまっていた、あの夜の青年。 

人間を信じられなくなりそうな 
分かれ道まで歩いてきた僕に 
天におられる恩師の薄っすらとし ....
新しい、新しい、と未来ばかりに手を伸ばし 
追えば追うほど、幸いの虹は逃げてゆく 

{ルビ古=いにしえ}の魂の形象を宿すものこそ 
今・ここに新しい 

古の魂をそっと胸に納め 
自ら ....
結婚前の嫁さんを僕は(きれいだなぁ)
と、うっとり見ていた 

結婚後にいつも一緒の嫁さんは、時折 
いもに見えることがある 

高熱にうなされ 
布団からふらふら身を起こした僕に 
 ....
自らの意思に反して 
もう一人の私が 
何処か遠くへ歩いてゆき 
おーい、と呼んでも聞こえない 

永遠に列車の来ない 
線路の上を歩いていたら 
地に伸びる私の影が、口を開き 
耳傾 ....
飲み屋の座敷で 
一人酒の盃を傾け 
いつしかこの頬は赤らみ 
脳みそは何処までも歪み 

おぼろなる意識の内で 
{ルビ転寝=うたたね}にかくんっと首の抜ける時 
夢の夜空にたった一つ ....
神保町の老舗・さぼうるで 
戦後間もない頃から 
50年、入口に立つ 
80歳のマスターに、僕は尋ねた 

「毎日が単調にならない秘訣は?」 

「特にないねぇ・・・最近体調悪くてねぇ・ ....
一年の仕事を終えて 
家に帰った年の瀬の夜 

テレビで久しぶりに 
「ガソリン値下げ」のニュースを見て 
はじめて(嬉しい)と思う自分に少し驚く 

僕の顔に似た赤ちゃんを 
今夜も ....
妻の運転する車に乗り 
CDの再生ボタンを押す 

「状況はどうだい、居ない君に尋ねる」 

新たなる日々が、始まろうとしていた。 
3年前、自ら世を去った友を思い出していた。 

こ ....
嫁さんのお腹がふくらんだ頃に 
富山に嫁いだ姉から 
大きなダンボールに詰めこんだ 
育児セットが届いた 

やがて赤ちゃんが生まれてからの日々を 
哺乳瓶や抱っこひもが 
育児に追われ ....
誰もが四つ葉のクローバーを、探している 

三つ葉のクローバーとは呼ばないが 
四つ葉のクローバーという名は、しっくりする 

三つ葉のクローバーは(ふつう)だが 
四つ葉のクローバーは奇 ....
世の人々が何処までも積み上げた 
バベルの塔が崩壊した後 
全てが消えた荒地の空に 
崩れることなく 
透き通ったまま立っている、風の塔 

全ての者が去った後 
たった独りで荒地に立ち ....
いま「時」は体を{ルビ傾=かし}げて、私にふれる 
あの不思議な金属音に 
私の感覚はふるえる、そして感じる 
私にはできると―― 

(それは遠いスクリーンに 
 映し出されている、まこ ....
君がつくってくれた朝食の 
おかゆを食べ終え 
茶碗の運ばれた、広い食卓に 
何とはなしに手を置けば 

木目に残る余熱は 
一つのぬくもりのように 
指から皮膚へ 
皮膚から体内へ  ....
ある画家の内面を映し出した 
目の前のキャンバスには 
ふたりの男が描かれ 

荷車を曳く者と 
荷車に乗る者と 
ふたり共、哀しく頬がこけている 

その画家は 
「生」という題を ....
生まれながらにリスクを負った 
大江健三郎の息子・光君は 
日々お婆ちゃんの看病をする 
お母さんの誕生カードに 
(つらいかた)と書いた 

(つらいかた)とは何だろう? 
老いたお婆 ....
久しぶりの実家へ歩く道の途中で 
幼い頃からあったガソリンスタンドが 
跡形も無い、さら地になっていた 

少年時代にキャッチボールをした 
友達の古い家と庭を塗り潰すように
まあたらしい ....
在りし日の詩人が仲間等と 
文学の夢を語った赤煉瓦のCafeで 
独り一篇の詩を綴るひと時 

当時のマスターが 
詩人へ送った葉書のコピーと
花束を捧ぐ想いを込めた詩を
重ねて
鞄に ....
こころの中に 
一つの家を建てよう 

どんなに激しい嵐にも 
どんなに揺れる地震にも 
決して消えることの無い、一つの家を 

地面に膝を落とす、日も 
涙の絞り落ちる、夜も  
 ....
一日忙しく働いた後 
たった五分でも本を読めば 
のんべんだらりと過ごしつつ 
一日一冊本を読むより 
開いた頁の一行が輝くかもしれない 

毎日なんにも悩まずに 
呆けた顔をしてるより ....
古書店で偶然みつけた 
昭和二十一年の「 四季 」という詩誌の 
頁を開くと、誰かの髪の毛が一本 
栞になって挟まれていた 

「 すて椅子 」という題の詩の中で 
公園に置かれたすて椅子 ....
道の遠くから 
何やら呟き続ける男が歩いて来る 
すれ違う瞬間 

「答は{ルビ空=くう}だ、答は{ルビ空=くう}」 

繰り返す呟きは背後に小さくなってゆき 
遠ざかる彼の背なかも小さ ....
……とある蛙さんの服部 剛さんおすすめリスト(74)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
詩人達の夜- 服部 剛自由詩720-9-20
日曜日の公園- 服部 剛自由詩12+*18-2-9
秋の運動会- 服部 剛自由詩915-11-3
日々の歓び___- 服部 剛自由詩515-10-13
太刀洗の道- 服部 剛自由詩5*15-1-4
どんぐり君- 服部 剛自由詩214-11-9
ちぐさにて__- 服部 剛自由詩11*13-10-21
からっぽの旅__- 服部 剛自由詩712-12-5
山門_- 服部 剛自由詩712-9-20
門_- 服部 剛自由詩512-7-16
虹のありか_- 服部 剛自由詩4*12-3-14
いもと嫁さん_- 服部 剛自由詩7+*12-2-26
もう一人の私_- 服部 剛自由詩8*12-2-11
星の友達_- 服部 剛自由詩6*12-2-7
珈琲店・さぼうるにて_- 服部 剛自由詩3*12-1-23
家族の船_- 服部 剛自由詩712-1-1
船に乗る日_- 服部 剛自由詩511-12-13
オルゴールの唄_- 服部 剛自由詩411-12-7
四つ葉のクローバー_- 服部 剛自由詩411-11-29
風の塔_- 服部 剛自由詩511-11-29
天のポスト_- 服部 剛自由詩611-11-11
手のひらの詩_- 服部 剛自由詩811-10-11
夕暮れの坂_- 服部 剛自由詩411-10-11
光の音符_- 服部 剛自由詩211-10-7
空からの手紙_- 服部 剛自由詩411-5-31
詩人の夢_ー神保町・ラドリオにてー__- 服部 剛自由詩411-5-24
こころの家_- 服部 剛自由詩711-5-14
夢の種_- 服部 剛自由詩511-5-9
髪の栞_- 服部 剛自由詩411-5-9
壺の音_- 服部 剛自由詩411-4-12

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