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{引用= こがらししとだえてさゆる空より
地上にふりしくくすしきひかりよ}
埠頭の水たまりに
月がこごえはじめている
真夜中には
かげもまた針のようにゆっくりと ....
{引用=
龍は問うた
ことばではなく
ことばにならないことばで
胸の暗がりで蹲るあらぶるものに
なぜ
龍の子は
ひとを殺めたのかと
水晶に映される
流血の惨劇は ....
かけおりてくる兵隊がいる
指揮だけがあって四季のない顔のない
丘のうえから
いっせいに声があがる
雲がわく
あがる声には
責任がないから自主性がない
....
柄のとれたモップの毛先から滴りおちてくるのは
汚れた雨だれ
きっと
津波だってそうだね
津波なんて言葉ききたくもないけどね
月なみだってそうだよ
邪気がないからや ....
{引用=
掠れた息をつくように
ベッドにそっと
言葉にならないものを吐いたとき
その言葉にならないものはすぐ露のように朝の陽にきえた
あの日のあの雲にはもうであえな ....
褪色したかこはモノクロ
セピアのくすむ
鉄錆の
あかがね色
ふくざつに入り組んだそら
四角い工場群がある昭和のはじめは卵の
ちいさな箱
筒状のえんとつ
....
ゆきちゃんは あさ
かさをさし 長靴をはいて
雨のなかの花にあいさつする
話しかける
おじぎをする
おはよう さようなら
きょうなにたべるってたずねている
....
二〇〇八年七月一九日、昭和女子大学人見記念講堂に於いて八三歳の吉本が「自分がしてきた仕事が全部ひとつにつながるということを話してみたいんです」と希望して実現したのがこの講演会であり、至極当然のごとく ....
《鯉がたべたい》
と、言ってあまえ
まったく隙だらけ
そのくせ自意識は役者なみの
あのサムライ
かれは
前世のぼく
なのじゃな ....
水々の声をきいたことがある
うめきに似た
くるしげな
声にならない
声になるまえのだれかの
花々の声をきいたことがある
....
樹木の幹を截ち割って
樹木がうまれてくる
ひとを截ち割って
ひとがうまれてくるように
*
きょだいな
ウ ....
埠頭から埠頭へとコンクリートと鋼鉄の道を手わたす
橋の下で
アキ缶を叩きつぶしながら
男たちがラアラア話をしていた
母音/子音
混ぜあわせたコトバが
まったく意味 ....
胴体に日の丸をつけた飛行機が
滑走路から飛び立ってゆくのを見送っていた
まるでデジャヴュでもあるかのように
ものを書き
考えることをしてきた
だのに、なにも残って ....
川面で光の魚がはねている
春と霞を点描で描くのはぼくではない
土手の並木の樹勢のなかを
グングンふくらみ育ってゆくもの
ふくらみみもだえて勢いを増してゆくもの
樹 ....
猫のようなKといると
ぼくの言葉の文脈は乱れふあんな小波が打ちよせてきて
とても平叙文ではいられなかった
煎じつめれば
煎じつめなくても
Kは妻で
Kは猫だっ ....
ゆうべはねむれないまま舟を漕いだ
ねむれないまま舟を操り蘆を払って湖沼をすすんだ
朦朧とねむれないままもとの舟着場にもどる
と、先がみえない霧のなかを漂流していたことがわ ....
農業をする蟻ハキリアリをみていた
福山雅治が
素っ頓狂な声をあげた
列をなして葉っぱを運んでいる
きりとった葉っぱをミドリの帆にして巣穴に運んでいる
蟻の道が ....
{引用=
真夜中に犬の声がかけてゆく
やっと帰宅した息子と
息子の帰宅を待っていた家内が
ダイニング・テーブルではなしをしている
声が
ボソボソきこえる
テレビの ....
なにが有効な手なのか
わからないままに
かれは
もう、とっくに
地図に表記されていない場所にきていた
音がない
姿がない
赤い血が
ながれることのない ....
しわくちゃなので静かな紙面に舟を浮かべると
宙の上で均衡がとれるように
その点において
静置する
対になるその
たゆたう舟の影も
水底でしわをつくって静置する ....
{引用=
まもるもののない空から
かれの顔や肩に雨がおちてきて
夕ぐれが
せまっていた
きょう
という日は
くぐりぬけねばならない試練のような
分厚い曇 ....
{引用=
満月の夜には
外にでてはいけないと老婆はいう
ふらふらと外にでて
川を遡上
青い山に囲まれた
いちばん星空に近いその湖に行ってはいけないと
ゆらめ ....
{引用=
こんなにもかなしくさびしい目をした
青い犀は
かつてみたことがない
霜月はじめ
いや
ぎりぎり瀬戸際のこの師走のおわりの
月さえ凍える
しろい ....
SF作家や
だれかによって手渡された
未来のそばで
ぼくらは生きている
どこかがイビツでなにかが不適切なこの
だれかの未来は
あるいは
使用方法をあやまっ ....
カゲがひとつ減った
またひとつ減ってこれでは
カゲの家族が家族ではなくなってしまう
カゲの家族の個々のカゲすらなくしてしまう
とつぜんの惨劇ではなく
しのびよって ....
冬のあま雲に
のぼってゆくように
クルマで雲に
わけ入っていった
国道の
あま雲のなかは
濃いキリが視界をさえぎる世界で
アスファルトに刻まれたセンターラ ....
抽象画家が描いた
うつくしくはりめぐらされた運河
本流が支流になって
クモの巣状の千の川になる
―― そこに
ジェルマン
という街がある
静電気をおびた ....
いくつもの
ヒルとヨルとを重ねあわせた
一枚の都市の風景画と
そこのみで生きる人物が描かれているとして
かれは
どこのマチカドを
いくど
折れまがり
バス ....
すれちがったトラックには
零れるほどのいのちが
ひしめいていた
通勤車両ではこばれる
ひとみたいに
いっせいに体をゆらしていた
くろい体毛
くろい顔
....
あんなにも忙しくぼくの脚はうごいていたのに
それいじょうに
踏みしめていたものの方が素早いなんて
なので、いつまで此処にいられるか
ぼくはじっさい
心もとない気分です
....
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