お金を数えていたはずなのに
気がつくと
銀行の人は星を数えていました
こんなにたくさん
どうやって集めたんですか
と尋ねるので
生まれた頃からあったと言いました
使いきれない ....
その空はどこにあるの
君が見たという
紺碧の空は
僕には見えない
何も見えない
白いカーテンしか
空がないんじゃない
僕は雨の真ん中にいるから
その空はどこにあるの
君が ....
相変わらず定まった向きで沈む
僕を含めた人々の群れが
溺れもせずに器用に進む
東京では何処も見慣れた世界
誰かの痕跡が消えていること ....
夏の海辺で一人歩いていると
一人の少女の死骸が発見される
そんな事からミステリーは始まり
ミステリーは悲劇の結末に終わる
結末の後にはまた日常がやってきて
俺はまた何見ると ....
わが一歩 一応は一歩進む
道に穴だ 二歩さがる
すこしずらして 一歩進む
空気がない すごすご引き返す
しゃがんで一歩 こっそり出す
いきなり水の中だ 鰓がなくて溺死
科学は日進月歩 ....
嵐が近づく空に 何層もの薄いすじ雲
重なり合い 競い合って 東へと速度を上げている
早朝の太陽は、雲の向こう側で白い輪郭を見せて
ときおり 周囲の雲を 白銀に輝かせては また隠れ ....
人が次々と溢れる
僕は誰のことも知らない
ましてあなたが誰だかなんか
今何を考えているかなんか
解りやしない のに
僕が何を言わんとするかは
あらかたバレて ....
ひとは執着から逃れられない
ひとは執着から逃れられる
執着を思わなければいいのだ
ひとつき後にはさくら花
いのちを賭けた尊い轍に
つらなる裸木が上を向く
ひ ....
あい変わらずぼくは
かなしみを知らなかったから
トーイチに会いにゴミ捨て場へ行った
夜中に網小屋まで降りて来て
悪さをする星どもなら知っとるがの
じゃが かなしみは知らん
カン女に ....
びょういんの
まちあいしつで
ろうじょが
テレビをみている
なにもうつらない
ひかひかひかる
しろいがめんをみていた
なにかを
まっているようだった
やがてろ ....
展望台から視線をはるかかなたへ飛ばすと
白の最中に消失して
雪が海に吸い込まれていく様子を
しかたなく眺めている
流麗な発音でワインをたのんだあとに
つめたいテーブルのうえに冷たい手のひ ....
望むと、かなしい気持ちになってしまう。なぜだろう。薄っぺらい胸を、うさぎがつきぬけていった。龍のかたちにはりさけていた。
わらうには、虚勢を張るしかないのだ。
ずいぶん遠くまで来た。でも、 ....
母ちゃんと旅に出る
鞄に歯ブラシ、着替え、切符と
最後にわくわくを詰めて チャックを閉める
朝一番のバスに乗り込んだ
母ちゃんと座席に並んですわる
乗り物酔いの薬あるよ
切符は持ったか ....
健康的な朝を
求めてある
夜ではない
闇を味方にして
明けない夜のあげる
かちどき
夜風が吹いて
飛び散る星の
窓の外
日の出る朝を
待ち望んである
夜ではな ....
帰り道を覚えることが
いつも 正確だったら 僕はうれしいと思えるけれど
正解はでない 暗がりの中で
君が遠ざかって
泣いて
泣いて
泣き濡れて
ひとばん泣いても
僕の涙の雨は止まなかった
光が見えなかった
このまま
ずっと
泣いたまま
君を想っていられるな ....
きみを
たいせつにされていない時間をくべて
かなしい町にしよう
はじまりしかない町
わたしが保証されるほど
糸が切れていくようなので
まちがったままでいいのです、
す ....
赤ちゃんは
眼が見えるようになると
まず
人の顔を認識するらしい
丸の中にふたつの小さな丸があったら
それだけで顔だとして
笑いかけるように
出来ているらしい
そうすることで
世界は ....
両手いっぱいに
摘んだ花
丘には輝く太陽
押し寄せる波のしぶき
唇にふれた砂
転がり落ちた車輪は
赤く朽ちてゆく
僕はあなたの乾いた瞳をなめて
夕日が暮れるのを ....
硬直は誠実ではない。丸い玉の中をハムスターが走り続ける。同
じことばかり繰り返しているとバカになる。しかし同じことを黙々
と繰り返す熟練した職人はバカではない。悩ましいことは決して
有意なことで ....
針を数えたか、と
父が言う
裁縫は針を数えることから始まって
針を数えて終わるんだと
わかったようなことを言う
自分では
ボタンひとつかがらないくせに
もしも
針がどこかに落っこち ....
きみは僕に問う
僕が不条理を否定するようなことを言ったとね
僕は答える
ああ言ったよ
不条理はひとを幸せにしないってね。
じゃあときみは訊ねる
ペケットの“ゴドーを待ちながら”を
....
太陽を食べながら
冬晴れの冷気を泳いで行く
空に笑いかけて
わたしは噴水のように歌っている
土地っ子のヒヨドリも
旅行者のツグミも
わたしとともに歌っている
白樺も我を失うほどだ
....
{引用=根底から
ひかりがすべり落ちている
ぐるりと結わえたひとつなぎのくさりが
少しずつ希薄になってきている
そこが温かいと机に伏しておもう
おもう?
うなずく
好きな ....
1
白く熱い道を
白いカッターシャツの高校生が
自転車でくる
7年ぶりに会った息子、きのうのこと
美しく花開いたのっぽのあの子
その道を今日も彷徨えば
また出逢った有り難さ
足 ....
セレモニーが終わる
家から1マイルほど離れた公園で
タクシーを降りて
ナップサックを開け
鍵をさがした
予想に反して
父親がドアの前で待っていた
「疲れたか?」
私は首をふった ....
不思議
深く眠りながら
果てしなく醒めている心地
見えない舟が 横たわる僕を乗せて
透きとおる彼方へと 漂ってゆくよ
夜は青く
あえかな香りが僕を包む
この流れのほとりには 何処まで ....
*銀色夏生の「下心」のアンサー・ポエム
確信をもって行動したら
「そういうのは、ちょっと」と否定された
恋をしていたけど愛はなかった
貴方にも
後になって気づいたのだけど
否定されても ....
掘り返せば死骸ばかりだ
蝉の脱け殻。皺ばんだ祖母の手
掘り返せば死骸ばかりだ
踏み躙られた残雪。子供のはしゃぎ声
掘り返せば死骸ばかりだ
必ずハッピーエンドで終わる物 ....
やがて再び北風の中
道端のネコヤナギの蕾のように
やさしい春の指先が頬を撫でようと
いつか一つの曲がり角の先
私を包み、光へ導くような
誰もが期待する運命が待っていようと
もうこれ以上一つ ....
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