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かつてランボオという名であった 
その喫茶店は、真昼も 
赤煉瓦の壁に、洋燈を吊るし 
仄かな灯を、ともしている 

在りし日の作家が 
夭折した友と懐かしい時を過ごした店の前で 
あ ....
夜の冷たいベランダに出て、丸い月を眺
める。誰にも云えぬ悩みを白い吐息で呟
けば、胸底の容器に濁り積もった毒の塊
が、少しずつ、少しずつ、蒸発し、夜の
静寂に吸い込まれ、いくぶんか、胸の重
 ....
ふと見下ろした煉瓦の上に 
蝸牛の子供が一匹 
二本の細い触角で 
何かを探るように、這っている 

少しの間、僕は思いに耽り 
ふたたび見下ろした 
小さい渦巻はさっきより 
確かに ....
一体どんな違いがあるのだろう? 
夏日の照りつけるアスファルトの上 
ゆらゆらと 
{ルビ陽炎=かげろう}になって今日の食物を探す 
あの家のない人と 

駅の構内に日がな坐り 
10円 ....
2本のギターが 
壁に寄りかかり 
ひとつは背後に隠れ
倒れぬように、支えている 

もうひとつは 
傾きながら、立っている 
自分の力であるかのように 
背後の支えに、気づかずに 
 ....
{ルビ若布=わかめ}の{ルビ疎=まば}らに干し上がる 
六月の浜辺を振り返れば 
今迄歩いて来た僕の 
たどたどしい足跡が 
霞がかった岬の方まで 
延々と続いていた 

あの岬の幻は  ....
友と杯を交し 
日々の想いを 
語らう夜に 

酔いどれて独り 
家路を辿る 
夜の道すがら 

何ヶ月も同じ場所に坐り 
路傍の石と化した 
家無き人の 
汚 ....
チェーン店のカレー屋で 
「グランドマザーカレー」
を食べていた 

自動ドアが開き 
ヘルパーさんに手を引かれた 
お婆さんが店に入り 
隣の席にゆっくり  
腰を下ろした 

 ....
くたびれた足を引きずって 
いつもの夜道を帰ってきたら 
祖母の部屋の窓はまっ暗で 
もう明かりの灯らぬことに 
今更ながら気がついた 

玄関のドアを開いて 
階段を上がり入った部屋の ....
最近、黒い手袋が
落ちているのをよく見かける 

ある時は職場の廊下 
ある時は駅の構内 

人間達の無数の足が 
通り過ぎてゆく隙間に 
{ルビ木乃伊=みいら}の面影で 
誰にも届 ....
忙しい日々から逃れ 
疲れた体を暖めようと 
平日の{ルビ人気=ひとけ}少ない温泉で 
頭の上にタオルをのせて 
露天風呂に沈んでいた 

ゆげの立ち昇る 
水面に 
現れては消えてゆ ....
「 いってきます 」 

顔を覆う白い布を手に取り 
もう瞳を開くことのない 
祖母のきれいな顔に 
一言を告げてから 
玄関のドアを開き
七里ヶ浜へと続く 
散歩日和の道を歩く 
 ....
少し前まで{ルビ賑=にぎ}わっていた 
デイサービスのお年寄りが帰り 
部屋ががらんと広くなった 
{ルビ掃除=そうじ}の時間 

いつも掃除機をかけるおばちゃんが休みなので 
「じゃ、俺 ....
 立原道造記念館に行った日 
 「立原道造と堀辰雄」という図録を 
 細い両腕で包むように 
 君はぎゅっと抱き締めた 

 後日僕は独りで 
 同じ場所に佇み 

 在りし日の詩人の ....
「目線を一歩ずらした所に、詩はあると思います」 

何年も前の合評会で 
今は亡き講師のMさんは 
僕に云った 

仕事帰りの夜道を 
車のライトで照らしながら辿り着いた 
深夜の飲食 ....
真夜中に部屋の中で一人 
耳を澄ますと聞こえる心の音 

沈黙の中で奏でられるピアノ 
同じテンポ・同じ音階で 
人の心に迫り来る音がある 

写真立ての中に映る懐かしき人々が 
時を ....
ひとりになるということは 
土手の芝生に埋もれながら 
日に照らされて喜んでいる 
ひとつの石になることです 
先輩の女性職員が 
傘も差さずに 
雨の中、楽しげな小走りで 
施設の入口に入っていった 

来春寿退社する先輩は 
そうして幸せの入口へ 
姿を消してゆくだろう 

僕がまだ2年目 ....
観音さまは 
山に身を埋めて 
どんな時でも 
じっとしている 

人々の隠し持った 
哀しみを 
瞳を閉じて観るように 
じっとしている 

弱い私が 
揺らぐことの無いように ....
最近何故か 
夜の道で 
片目のライトで走る車を 
よく見かける 

日頃の僕が片目でしか見えてないのか 
最近出逢ったひとは片目の女なのか 
どちらの暗示にせよ 

人は誰もが両手 ....
上司の言葉に傷ついた先輩が 
辞表を出そうとしていたことを 
打ち明けられて 

床に広げた模造紙に 
クリスマスツリーの絵を描きながら僕が 
見上げた先輩の背後にぼんやり浮かぶ
十字架 ....
  群衆は「悪」を免れぬ、羊の群  
  国も、病院も、街も、荒んだ牧場・・・  

  その昔 
  人体実験の手術に 
  加われず執刀医の背後で 
  怯えたまま青白い顔で立ち尽くす ....
「この病室は、眺めがいいねぇ・・・」 

ガラス越し
輝く太陽の下に広がる 
パノラマの海 

ベッドの上で点滴に繋がれて 
胸の痛みに悶えながら 
なんとか作り笑いをする祖母をよそに ....
「赤信号」で車を停めて、
サイドブレーキを引く。  

車の外に見えるのは 
数ヶ月前、脳梗塞で世を去って 
デイサービスにはもう来ない 
お婆さんの民家の庭 

いつも杖を支えに 
 ....
ビデオデッキにテープを入れて
リモコンの電源ボタンを押した
テレビ画面の中に 
七年前あどけない少女だった君が 
野の花の姿で 
{ルビ宇宙=そら}から受信する 
言霊を 
小さい唇から ....
皆が笑顔で集う 
不思議な海の中心で
貝のこころを開いて
歓びを分け合うのも自分 

ふいに人と話せなくなり 
深海の暗闇で 
貝のこころを固く閉じ 
独りきりになっているのも自分 
 ....
僕の手にする
透明なハンマーを振り上げて
目の前にぼんやりと立つ 
姿の無い退屈を、叩き壊す。 

粉々に砕け散る音が聞こえ 
全てを手放した僕の前に 

  0

の門が現れる  ....
職場の休憩室で 
目覚めた朝 
ふいに手を見ると 

午前零時過ぎまで残業した 
昨日の仕事をメモした文字が 
手の甲に薄っすらと残っていた 

昨日がどんなに忙しかろうと
昨日がど ....
渋谷駅前広場に置かれた 
緑のレトロ電車に入り腰を下ろせば 
クッションみたいな長椅子は 
日頃の腰の疲れを
吸い取るように暖かい 

走ることの無いこの車両に 
集まる老若男女は 
 ....
母親に抱かれた赤児は 
空に響き渡らんばかりの声をあげ 
全身で泣いている 

泣くことは、生きること。 
だというように 

ほんとうは大人になっても、
黙ったふりで、泣いている。  ....
フミタケさんの服部 剛さんおすすめリスト(38)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
真昼の洋燈_- 服部 剛自由詩510-6-24
お月見の夜_- 服部 剛自由詩9*10-1-27
台風0号_- 服部 剛自由詩7*09-7-29
ただようひと_- 服部 剛自由詩509-7-26
ギター_- 服部 剛自由詩409-7-11
明日の海_- 服部 剛自由詩909-7-3
光の夜道_- 服部 剛自由詩909-4-23
稲穂のこころ_- 服部 剛自由詩1109-3-22
遺影のまなざし_ー四十九日前夜ー_- 服部 剛自由詩2009-3-10
黒い手袋_- 服部 剛自由詩809-3-4
泡の鏡_- 服部 剛自由詩1009-2-14
海に還った祖母に捧ぐ_- 服部 剛自由詩3509-1-24
掃除の時間_〜延長コードと僕〜_- 服部 剛自由詩709-1-21
林道の彼方へ_- 服部 剛自由詩309-1-14
幻ノ花_- 服部 剛自由詩509-1-14
夜想_- 服部 剛自由詩609-1-9
石のこころ_- 服部 剛自由詩408-12-29
幸せの入口_- 服部 剛自由詩208-12-18
観音さま_- 服部 剛自由詩308-12-6
(無題)_- 服部 剛自由詩308-12-4
背後の声_- 服部 剛自由詩108-12-4
(_病棟の屋上にて_)_- 服部 剛自由詩208-11-23
祖母の見舞い_- 服部 剛自由詩508-11-18
坂道の上の空_- 服部 剛自由詩208-11-6
星に願いを_- 服部 剛自由詩208-11-2
貝をひらく_- 服部 剛自由詩608-11-2
「_0_」_- 服部 剛自由詩308-10-20
(_今)に立つ- 服部 剛自由詩5*08-10-15
昭和の電車_- 服部 剛自由詩908-10-13
泣いていいよ_- 服部 剛自由詩508-10-12

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